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第3号  2003/12/22
  ▼  まえがき
  ▼  前号までのあらすじ
  ▼  システム開発という仕事はどのような仕事なのか?
  ▼ 今週号のまとめ
  ▼ 次回以降の予告

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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と
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感想、異論、反論をお持ちなら是非返信してください。


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 前号までのあらすじ
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ソフトウェア開発の歴史の中で、開発生産性を劇的に向上させた
特効薬として、まずOSと高水準言語、次いでUNIX、RDBMS、構造化
プログラミングがあげられます。
その後も、オブジェクト指向プログラミング、UML、
ウォータフォール型から反復型への移行、さらに反復型開発を
徹底したRUPとXP等、多くの技術・技法が現われましたが、
これらの発明の効果は劇的と言えるほどではありません。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 システム開発という仕事はどのような仕事なのか?
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ここで、システム開発という仕事はどのような仕事なのか
明らかにしておきましょう。

システム開発という仕事はよく建築にたとえられます。

建築という仕事の概要は次のとおりです。
(1)建築家は顧客のために、顧客に分かる言葉で設計図を書きます。
 この段階での設計は利用者の側から見た設計です。
(2)工事の施工段階に入ると建築家は施工業者のために工事用の
 詳細図を作成します。
(3)施工業者は設計者の作成した設計図と詳細図に基づき工事します。

そして、「システム開発では外部設計が(1)の作業にあたり、
内部設計は(2)の作業であり、プログラミング以降は(3)の
作業にあたる」と説明されます。

これは非常に分かりやすい説明ですが、システム開発に
おける設計が建築における設計よりもはるかにやっかいで
異質なものであるという事実を忘れさせる恐れがあります。

システム開発と建築との大きな違いを3つ上げます。

[不可視性:視覚化しにくい]
建築は3次元空間に物理的に存在するものです。
したがって本質的に視覚化しやすいものなのです。
建築の場合は、素人でも設計図を見てどのような建物ができるのか
十分に理解できます。
それに対してソフトウェアは、人間の思考という形のないものから
生まれ、最終形はビットのオン・オフとも、不特定多数の人々の
使用とも言える創作物です。
ソフトウェアは、どの段階でも自然には視覚化できないものです。

例えば楽譜を見ても素人はどのような曲であるか理解できません。
玄人なら分かるかというと、同じ楽譜でも解釈に大きな幅があります。
ソフトウェアは視覚化しにくいという一点では音楽に似ています。
そのくせ、音楽と違って極端な厳密性が要求されます。


[可変性:柔軟すぎる]
建築の場合は、途中での仕様変更がいかに大変なことか、
素人でも直感的に理解できます。
一方、プログラムは極端に自由で可塑的な素材なので、
顧客もプログラマも仕様変更を安易に考えてしまいます。
また、視覚化のしにくさから設計図段階では完成像をイメージ
できないため、工程が半分以上進みおぼろげながら完成像が
見えてきた段階で、顧客は「自分のイメージと違う」と
言い出します。
つまり、システム開発での仕様変更(顧客の側から見たら
変更ではない)の圧力は建築の比ではないのです。


[複雑性:量が増大すれば質が複雑化する]
建築は規模が大きくなっても部品の種類はさほど増えません。
同種の部品を数多く使って規模的に大きくしていくのです。
体積が10倍になっても、部品の数が増えるのみで種類は
ほとんど変わりません。
一方、ソフトウェアは似通っている部品があれば共通化して、
行数を圧縮するので、それでも量が増える場合は、部品の
種類も増えているということです。
つまり建築は体積が増えても質的には大差ないのに対し、
ソフトウェアは行数が増えれば質的にも複雑になっていくのです。


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  今週号のまとめ
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システム開発には外部設計、内部設計、製造という作業が
含まれます。この点については、建築のみならず、自動車、
服、鞄などの人工製品の製作も同じです。
演劇、音楽、彫刻といった芸術ですら似たような工程があります。
これは人間の創作活動がもつ一般的な性格なのです。

しかし、システム開発の設計作業は他の製品の設計作業よりも
はるかにやっかいな作業です。
そしてそのやっかいさは、「視覚化しにくい」「柔軟すぎる」
「量が増大すれば質が複雑化する」というソフトウェアの本性に
由来するものです。


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  次回以降の予告
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  12/29 最近の発明が何故劇的効果をあげないのか?
 1/6 5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?
      次号は、12月29日発行予定です。乞うご期待!!


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役  蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490  携帯:090-1258-6347



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