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第6号  2004/1/12
  ▼  まえがき
  ▼  復習:創作活動の二つの難しさ
  ▼  プロトタイピング
  ▼  漸増的(ぜんぞうてき)開発
  ▼ 次回以降の予告

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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と
契約している個人事業主の方々に配信しています。
ご感想をお持ちなら是非返信してください。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 復習:創作活動の二つの難しさ
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第4号で、「創作活動の難しさには、創作自体の本質的な
難しさと媒体に表現することの難しさとがある」という
ことを説明しました。それをもう一度復習してみましょう。


【ワープロ登場前の小説書き】

●物語作り  ○文章書き/推敲(手)       ■版下作成/校正 △印刷
|●●●●●●|○○○○○○○○○○○○○○○○○○|■■■■|△△△△|


【ワープロ登場後の小説書き】

●物語作り ◎文章書き/推敲(PC)C印刷
|●●●●●●|◎◎◎◎◎◎◎◎|△△△△|


「物語作り」とは、登場人物の設定や効果的な構成、骨組みなど
小説の核になるアイデアを考える作業です。
この中には各種文献を調べたり、現地取材をしたりする作業も
含まれます。
小説家はこうした作業で材料が出揃ってから文章を書き出します。
その後に「文章書きと推敲」「版下作成と校正」「印刷」という
作業が続きます。

ワープロは「文章書きと推敲」「版下作成と校正」の作業を
一体化し、効率化しました。
もちろん推敲の過程で物語の枝葉が変わることはありますが、
核になるアイデアは変わりません。そして、核になるアイデア
こそ、小説の面白さを決めるものなのです。
したがって、「物語作り」が小説書きの本質的な作業であり、
「文章書きと推敲」「版下作成と校正」は付随的な作業である
と言えます。

付随的作業に要する時間は、ワープロの登場によって飛躍的に
短縮されたのに対し、本質的作業に要する時間はワープロが
あろうと無かろうと変わらないということに注目してください。

今週号では、システム開発での本質的作業を効率化する
技術について解説します。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 プロトタイピング
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プロトタイピングについて、ある本では(1)のように説明され、
別の本では(2)のように説明されています。

(1)プロトタイピングモデルによって、開発コストの削減や
 開発期間の短縮などが期待できる。
(2)プロトタイピングモデルのような開発手法が普及して
 きたことにより、従来に比べ、仕様の確定がむずかしく
 なってきている。

これではプロトタイピングが、システム開発の難しさを軽減して
いるのか増大させているのか分かりません。

下記は第3号からの引用です。

> 視覚化のしにくさから設計図段階では完成像をイメージ
> できないため、工程が半分以上進みおぼろげながら完成像が
> 見えてきた段階で、顧客は「自分のイメージと違う」と
> 言い出します。

これを防ぐためにプロトタイピングが必要なのです。
プロトタイピングとは、システムの要件を繰り返し抽出し、
洗練していくことです。
重要なインタフェースをシミュレートし、顧客に自分自身が
指定したはずの主要機能を実際に見せることです。

しかしこれを下手にやってしまうと上記(2)のような弊害が
出てきます。
その弊害が発生する原因は下記ような非技術的な(それ故
技術者が苦手な)問題です。
・顧客の担当者は自分の仕事で忙しいのでなかなか仕様を
 決めてくれない。
・顧客は思いつきで好き勝手なことを言う。

その結果として、進捗が遅れ、受託会社にしわ寄せが来ます。

プロトタイピングは優れた手法なのですが、効果は顧客の姿勢
とSEの手腕に依存します。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 漸増的(ぜんぞうてき)開発
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ウォータフォールの時代の開発は下記のパターンのどれかでした。

(1)作ってみたが使い物にならなかった。次期バージョンで大幅に
 改修し、ようやく使い物になった。
(2)開発工程の後半になって、このままだと使い物にならない
 ことが判明し、再スケジュールし、大幅に作り直して、
 使い物になるシステムを完成させた。
(3)担当SEが以前同様のシステムを手がけていた(例えば、今回開発
 したA社の販売管理システムと似通ったB社の販売管理システムを
 開発した経験がある等)ので納期、品質ともに満足のいく成果を
 収められた。つまりそのSEにとっては、その開発は以前経験した
 開発のバージョンアップのようなものであった。

いずれにしても使い物になるシステムを作るためには漸増的再構築
(バージョンアップ)をしているのです。
この漸増的再構築を開発プロセスの中に肯定的に取り入れたのが
漸増的開発です。インクリメンタルモデル、スパイラルモデル、
イテレーティブ(繰り返し型)モデルなどと呼ばれます。
RUPも漸増的開発の一種です。
流派によって少しずつやり方が違いますが、漸増的再構築を
意識的・計画的にやろうということが基本的な考え方です。

プロトタイピングが外部仕様の確定を目的としているのに対し、
漸増的開発は使い物になるシステムの迅速な開発を目的としています。

したがって、もしも(3)のように、新規開発であっても担当SEに
とっては漸増的再構築のようなものであるなら、漸増的開発の
必要性はない、あるいは限定的な適用で十分とも言えます。
漸増的開発をどのような形で適用するかはそのプロジェクトの性格、
要員の経験に依存します。

漸増的開発も優れた手法なのですが、効果はSEの手腕と環境に
依存するのです。

媒体への表現に関する特効薬は誰が飲んでも一定の効果が出ますが、
本質的作業に関する特効薬は飲む人によって効果が大きく異なります。


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  次回以降の予告
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  1/19 5年後のシステム開発
 1/26 では、どうすればよいのか?
      次号は、1月19日発行予定です。
   いよいよこのシリーズも佳境に入ってきました。乞うご期待!!


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役  蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490  携帯:090-1258-6347


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