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第7号 2004/1/19
▼ まえがき
▼ プロプライエタリシステムの時代
▼ 1990年代以降の激変
▼ 標準化の圧力はどこから来たか?
▼ 差別化を否定し、差別化する
▼ 次回以降の予告
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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。
本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。
ご感想をお持ちなら、是非返信してください。
私は「ソフトウェア業界航海術」の「1.2.2.1 技術革新」の章で
下記の指摘をしました。
1980年代は、汎用機、UNIX、PCともに比較的技術変化が緩やかな
時代でした。それに対し、1990年以降、特に1990年代後半から
現在までは、技術の変化が激しい時代です。
今週号では、1990年代以降の急速な技術の変化を促した
「オープンシステム」について本メルマガ流に説明します。
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[5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
プロプライエタリシステムの時代
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オープンシステムとは、一般に「様々なメーカのソフトウェアや
ハードウェアを組み合わせて構築されたコンピュータシステム」と
説明されています
一方、特定のメーカの製品のみで構成されるシステムは、
プロプライエタリシステムと呼ばれます。
オープンシステムが主流となったのは1990年代以降です。
例えば通信一つとっても1980年代まではIBMはSNA、富士通は
FNA、NECはDINAといったように各社で独自の規格があり、
しかも、その仕様は非公開であったため、複数メーカの
コンピュータをつなげることは容易なことではありませんでした。
OSも1980年代まではそれぞれのハードウェアベンダーが製品ライン
ごとに独自のOSを一つ二つ持つのが普通でした。
プロプライエタリシステムが主流であった時代は、ソフトウェア会社の
生き方も現在と違っていました。
ある特定顧客、特定環境に依存して生きていたのです。
例えば、次のように・・・。
「創業以来、三菱電機製オフコンのソフトばかりやっています。」
「富士通のOSがらみだけを20年間やっています。」
「日立汎用機で農協のシステムを専門にやっています。」
それはある意味では快適な世界でした。
学ぶべき技術は一つのハードウェアベンダーの技術に限定されて
いましたし、環境や技術が激変することはありませんでした。
市場としての大きさや発展性がないかわりに、特定顧客との人間関係、
特殊技術、特殊環境が参入障壁となり保護してくれました。
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[5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
1990年代以降の激変
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共通規格があれば相互運用性が高まり、重複開発も減り、
経済的であることは1980年代以前から分かっていました。
しかし、1980年代までは共通規格を作ろうとしてもうまく
いかなかったのです。
例えば国際標準化機構がOSIを作っても普及しませんでした。
国内でパソコンメーカがMSXを作っても普及しませんでした。
どんなに小さなUNIXベンダーも自前のUNIXを持っていて、
UNIX統一の試みはことごとく失敗しました。
折角統一規格を作っても各社で細かな差別化を図って、実際には
共通になりませんでした。
1980年代までは共通規格の利点よりも独自規格の利点の方が
大きかったのです。
ところが1990年代以降は、すっかり様変わりしました。
通信プロトコルはLANもWANもTCP/IPに統一され、OSの種類は
激減しました。
UNIX陣営も皆でLinuxを担ごうとしています。
かつてはあらゆる分野で必ず独自規格を打ち出したIBMは、
今では標準を忠実に守る企業になりました。
マイクロソフトですら標準化団体での協議を重視するように
なってきています。
標準化の主導権争いも激化しましたが、それも標準化が極めて
重要な意味を持つようになったからです。
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[5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
標準化の圧力はどこから来たか?
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この変化の原因は何でしょうか?
その答は技術書には書かれていません。
なぜならば、標準化に対する強烈な関心はコンピュータ業界に
限ったことではないからです。
金融業界、製造業界でも同時期に発生しているのです。
自然言語の世界ですら、英語の支配力がこれまでになく強まり、
弱小言語が淘汰されるという標準化が起きています。
標準化への圧力はより大きなところから、つまり、経済のグローバル化
から発生しているのです。
経済のグローバル化がコンピュータ業界の標準化を促し、
コンピュータ業界の標準化がさらに経済のグローバル化を加速
させているのです。
このメカニズムについては、ここではこれ以上触れません。
ここではオープンシステムがソフトウェア会社にどのような問題を
突きつけているかを記します。
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[5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
差別化を否定し、差別化する
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オープンシステムの問題点として一般に挙げられていることは下記の
二点です。
・不具合が生じたときに原因を特定するのが難しく、どのメーカも
自社製品に原因があると認めたがらない
・組み合わせが多すぎて、最適な選択が難しい。
しかし、オープンシステムがソフトウェア会社に与える最も根本的な
問題は、標準化というものが企業に与える共通な問題、つまり
「すべてが標準化されていく傾向の中で、どのようにして差異性を
確保していくか」という問題なのです。
差異性こそ競争力、そして利益の源泉です。
「創業以来、三菱電機製オフコンのソフトばかりやっています」
などというようなかつてのプロプライエタリ型ソフトウェア会社は、
自ずから差異性を持っていました。
開発言語、開発環境、顧客特有の文化、人脈、といった面で・・・。
これらの差異性はメーカ支配から脱することができないという
限界を決める一方で、自社が生み出す製品を自然と差別化してきました。
材料が違うから、当然生み出される製品も違うのです。
ところが、オープンシステム時代のソフトウェア会社に求められて
いることは、標準化された素材を使って、差別化された結果を出す
ことです。
「素材では差別化を否定しながら、結果は差別化しなければならない」
この根本的な矛盾がオープンシステムには存在するのです。
標準化された素材を使って、差別化する最も単純な方向は、低価格化・
短納期化です。
グローバル化は全ての業界で低価格化と短納期化を促進しました。
それがコンピュータ業界でも起きたのです。
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次回以降の予告
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1/26 5年後のシステム開発
2/2 では、どうすればよいか?
2/9 シリーズのあとがきと次シリーズの予告
次号は、1月26日発行予定です。乞うご期待!!
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発行:
株式会社 慶
代表取締役 蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490 携帯:090-1258-6347
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