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○:その他

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第103号  2005/11/28
  ▼  まえがき
  ▼  [製造業の呪縛] エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」
  ▼  [製造業の呪縛] 「インハウス開発」とは
  ▼  [製造業の呪縛] インハウス開発が多いのは、米国も同じ
  ▼  [製造業の呪縛] 請負開発の納品プログラムは「製品」ではない
  ▼  [製造業の呪縛] パッケージソフト会社は何を売っているのか?
  ▼  [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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  まえがき:新シリーズ開始
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・第102号ではシリーズ名を「製造業かサービス業か」としていましたが、
 「製造業の呪縛」と改名します。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/



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  [製造業の呪縛] エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」
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エリック・レイモンド氏はオープンソース運動の理論的な指導者です。

1998年に「伽藍とバザール」という有名な論文を書きました。
「Linuxはブルックスの法則(遅延したプロジェクトへの要員追加は、
さらなる遅れをもたらす)を打ち破った」と主張している論文で、
非常に面白いので、そのうち本メルマガでも解説します。

下記URLから、原文と山形浩生氏の翻訳版がリンクされています。
http://cruel.org/freeware/cathedral.html


次いで、エリック・レイモンド氏は1999年に、「魔法のおなべ」
という論文を書きました。
やはり、オープンソースについての論文ですが、「伽藍とバザール」が
開発方法論的な観点から論じているのに対し、「魔法のおなべ」は
経済学的な観点から論じています。

下記URLから、原文と山形浩生氏の翻訳版がリンクされています。
http://cruel.org/freeware/magicpot.html


本メルマガの「製造業の呪縛」シリーズは「魔法のおなべ」を参考に
しています。



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  [製造業の呪縛] 「インハウス開発」とは
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今から20年前、世界中のプログラムの90%は汎用機COBOLで書かれて
いました。業種的には、ほとんどが銀行や保険会社などの金融系でした。
そしてそれらのプログラムは、ユーザが社内開発していました。
(社内開発には、システム開発受託会社への下請けも含まれます。)

その後、流通、製造などあらゆる産業でコンピュータが使用される
ようになりました。
現在では、自動車もパチンコもマイクロチップで制御されています。

しかし、そこで動くプログラムの開発は、ユーザが社内開発する、
または、それをシステム開発受託会社に下請けして開発するという
点については、全く変わりがありません。

これらの開発は、「インハウス開発」あるいは「カスタム開発」と
呼ばれます。


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  [製造業の呪縛] インハウス開発が多いのは、米国も同じ
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インハウス開発は、それが使われる環境と密に統合されています。
ここで言う「環境」とは、業務系では、業務のやり方、社内組織、
既存システムなどですし、制御系では、そのソフトウェアが組み
込まれるハードウェア・ソフトウェア環境です。

インハウス開発は環境と密に統合されているが故に、再利用が難しく、
また、環境が変わるにつれて、ソフトウェアをそれに適合させるために、
たえず様々な作業が継続的に必要になってきます。
この作業を「メンテナンス」と呼びます。

米国は日本に比べてパッケージ利用率が高いと言われます。
そして、「日本のシステム開発はインハウス開発が多いからダメなんだ」
と言われます。

しかし、インハウス開発が多いのは、米国でも同じです。


> これは「メンテナンス」と呼ばれていて、どんなソフトエンジニア
> でもシステムアナリストでも、これがプログラマの賃金の大部分
> (75% 以上)を占める点には同意するはずだ。
> そしてこれにともなって、ほとんどのプログラマの労働時間が
> 割かれるのは(そしてプログラマの給料の大部分を占めるのは)、
> まったく販売価値のないインハウスのコーディングやメンテナンス
> だということになる。
>        (Eric S. Raymond 著「魔法のおなべ」より)



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  [製造業の呪縛] 請負開発の納品プログラムは「製品」ではない
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システム開発受託会社がインハウス開発を請負う場合、確かに
「もの作り」はします。

しかし、他に転用できない特注品を作っているのです。

ネジや歯車などの工業製品は、規格に合っていれば、様々な用途に
使用されます。だから大量生産に意味があるのです。
しかし、インハウス開発プログラムの複製には、販売価値どころか
利用価値もありません。
セブンイレブンのPOSシステムをコピーしても、ローソンでは使えない
のです。


住宅でも衣類でも、中古市場が形成されるのは、他に転用できる
からです。
しかし、インハウス開発プログラムの中古市場など考えられません。
中古住宅にも古着にも販売価値はありますが、インハウス開発
プログラムには販売価値はないのです。

請負開発の納品プログラムは、「市場で販売できない」という意味で
「商品」でも「製品」でもありません。
請負開発会社は「提示された仕様のプログラミングを作成する」という
サービスを販売しているのです。



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  [製造業の呪縛] パッケージソフト会社は何を売っているのか?
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それでは、多くの複製が作られ、パッケージ化され販売されるプログラムは
「製品」でしょうか?
パッケージソフト会社は、商品を販売しているのでしょうか?
それとも、サービスを販売しているのでしょうか?

一般には、商品を販売していると考えられています。

しかし、Raymond氏は「魔法のおなべ」で、パッケージソフトに関して、
「消費者が支払う価格の上限は、そのベンダのサービスの期待将来価値
である」と述べています。


面白い見解なので、次号でこの点について解説します。



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  [製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・パッケージソフト会社は何を販売しているのか?
・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方

付け足しとして
・日本標準産業分類(平成14年3月改訂)ではソフトウェア会社は
「サービス業」ではなくなっている。


次号は、12月5日発行予定です。

乞うご期待!!



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