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第104号  2005/12/05
  ▼  まえがき
  ▼  [製造業の呪縛] うらやましいが、参入できない
  ▼  [製造業の呪縛] 立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう
  ▼  [製造業の呪縛] パッケージで長期的に大成功することは難しい
  ▼  [製造業の呪縛] その理由は「サポートのコスト」
  ▼  [製造業の呪縛] 独占企業は自由にサポートを打ち切る
  ▼  [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・第102号ではシリーズ名を「製造業かサービス業か」としていましたが、
 「製造業の呪縛」と改名します。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/



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  [製造業の呪縛] うらやましいが、参入できない
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受託ソフト開発会社にとって、パッケージソフト会社はうらやましく
感じられます。

自分達は毎日働かないとメシが食えないのに、パッケージソフト会社は
一旦商品を開発してしまうと、後はコピーするだけでお金が稼げるように
見えるからです。

しかし、第64号、第65号で解説したようなパッケージソフト開発の
難しさを前にして、彼らはパッケージソフト開発に参入することを
あきらめます。

・第64号「仕様がない世界でのソフトウェア開発」
 ( http://www.kei-it.com/sailing/64-050228.html )

・第65号「改善に明け暮れて開発が遅れるとゴミになる」
 ( http://www.kei-it.com/sailing/65-050307.html )  参照



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  [製造業の呪縛] 立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう
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しかし、パッケージソフト開発は、小規模な成功でよいなら、極端に
難しいわけではありません。

例えば、船井総合研究所ソフトハウス活性化チームでは
「ソフトハウス経営者が180日で利益率20%のレールに乗り換える法!」
http://www.funaisoken.co.jp/search/search_3/GO1099.html
というセミナーを行っています。
(このセミナーを企画されている斉藤芳宣氏は、本メルマガの読者で、
慶に来社されたこともあります。)

私はセミナーには出席していませんが、無料小冊子は読みました。
下記はその小冊子に書かれている斉藤芳宣氏の言葉です。

・パッケージはポイントさえ外さなければ、それほどムリせず確実に
 利益を生むことができるんです。

・パッケージ商品の開発というと、すぐに「何をつくるか」と考えて
 しまうことが多いのですが、一番大切なのは「どの市場向けにつくるか」
 なんです。


確かにそのとおりです。



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  [製造業の呪縛] パッケージで長期的に大成功することは難しい
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しかし、より巨視的に見るなら、パッケージソフトで長期的に大成功
している会社は世界中でも数えるほどしかありません。
マイクロソフトだけと言ってもいいかもしれません。

大概のパッケージソフトおよびそのパッケージに依存したソフト会社が
たどる運命は次のようなものです。

 「最初の数年間は成長するが、市場の成熟とともに売上は横ばいとなり、
 下降線を描き、やがて消えていく。」


この盛衰の中から、カテゴリーごとにガリバーが誕生します。
DBのオラクル、ERPのSAP、そしてPCソフト全体のマイクロソフト、
というように・・・。

私はこれまで、この現象について、「OSや汎用的アプリケーションは
一種の媒体であって、規模の経済が働くからだろう」と思っていました。



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  [製造業の呪縛] その理由は「サポートのコスト」
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しかし、エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」を読んで、
パッケージソフトで長期的に成功することが難しい理由、および、
パッケージソフト市場が寡占化する理由が分かりました。

その理由は、「サポートのコスト」です。
ここで言う「サポート」とは、ヘルプデスク、バグフィックス、
アップグレードなどのアフターサービスです。

通常、パッケージソフトの購入価格は高く、サポート料は無料に
(有料でもうんと安く)設定されます。
これは工業製品の価格設定を真似たものです。

売上が伸びている場合はこのような価格設定でも、うまくいきます。
ユーザが増え、そのためサポートコストが増えても、売上の伸びで、
サポートコストの増加を賄えるからです。

しかし、市場が成熟して、売上の伸びが鈍化してくると、この価格
設定は破綻します。

売上が横ばいになっても、ユーザは売れた本数分増え続けるので、
サポートコストは増大し続けます。
売上が減っても、ユーザは減らないので、サポートコストは減りません。


工業製品も購入価格は高く、サポート料は低いのですが、それらは
ソフトウェアほどにはヘルプデスク、バグフィックス、バージョン
アップは必要としないので、大きな問題になりません。



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  [製造業の呪縛] 独占企業は自由にサポートを打ち切る
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バージョンの数が増えるにしたがって、サポートはますます複雑・
煩雑になり、コストは膨らみ続けます。

サポートコストに耐え切れなくなったソフト会社は、旧バージョンの
製品のサポートを打ち切ります。
これは、シェアの小さい会社から行われます。

サポート打ち切りは、ユーザを離反させ、シェアをさらに小さくし、
やがて、その会社は市場から撤退していきます。

このようにして、寡占市場が形成され、いずれは独占企業が誕生します。

そうなったら、ユーザは他に流れようがないから、独占企業は自由に
サポートを打ち切るようになります。

例えば次のように。

> Windows 95 の無償サポートに関しては 2001 年 3 月末を持ちまして
> 終了し、オンライン セルフ サポートも、2002 年 12 月末を持ちまして
> 終了させていただきました。 
> http://www.microsoft.com/japan/win95/default.asp


> ■ Windows 98 Second Edition アップデート CD の提供は終了しました。
> ■ Windows 98 Service Pack 1 の提供は終了いたしました。
> http://www.microsoft.com/japan/win98/



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  [製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方

付け足しとして
・日本標準産業分類(平成14年3月改訂)ではソフトウェア会社は
「サービス業」ではなくなっている。


次号は、12月12日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
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