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○:その他

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第121号  2006/4/3
  ▼  まえがき
  ▼  [5年後のシステム開発] 30年前の洞察が今でもそのまま通用する
  ▼  [5年後のシステム開発] 仕事の4分類
  ▼  [5年後のシステム開発] 人数と時間との関係は仕事によって異なる
  ▼  [5年後のシステム開発] 人数と時間の関係図についての注釈
  ▼  [5年後のシステム開発] 順次的であり、且つ、相互関連を持つ
  ▼  [5年後のシステム開発] ブルックスの法則への反対意見
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

先週号から「ブルックスの法則」について書いています。
久しぶりの「5年後のシステム開発」シリーズです。

「5年後のシステム開発」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_2010.html
を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/



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  [5年後のシステム開発] 30年前の洞察が今でもそのまま通用する
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ブルックス著「人月の神話」は、1974年に書かれた本ですが、ごく
最近の論文にも頻繁に引用されます。
例えば、

> Frederick P. Brooks の古典The Mythical Man-Month からはあちこち
> 引用させてもらった。というのも、かれの洞察はいろいろな意味で、
> まだまだそのまま通用するものだからだ。
> 
>       (Eric S. Raymond 著「伽藍とバザール」より)


プロジェクト管理について書かれた著名な本で、「人月の神話」について
言及していない本はないと言っても過言ではありません。


しかし、「人月の神話」で書かれていることは、専門家でなければ
理解できないような難解なことではありません。

新人や素人にも十分に理解できるほど簡単なことを言っているのです。

以下に、「人月の神話」の最も根本的な部分を紹介します。


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  [5年後のシステム開発] 仕事の4分類
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ブルックスは仕事を下記の4つに分類します。

(1)完全に分割可能な仕事。
(2)分割不可能な仕事
(3)分担はできるがサブタスク間でのコミュニケーションが必要な仕事
(4)複雑な相互関連を持つ仕事


そして、それぞれについて、作業人数と完成までに要する時間との
関係を次のように説明します。



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  [5年後のシステム開発] 人数と時間との関係は仕事によって異なる
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(1)完全に分割可能な仕事。

多くの作業者の間でコミュニケーションを図らなくても、仕事が分担
できる仕事です。
ブルックスは、小麦を刈り取る、綿を摘むといった仕事を例にあげています。
この手の仕事は、作業人数を増やせば、完成までに要する時間は単純に
反比例して短縮されます。(下図参照。)

 
人数
 1 ***************************
 2 ********************
 3 **************
 4 *********
 5 *****
     月数


(2)分割不可能な仕事

しかし、連続していて分担できない仕事なら、作業人数を増やしても、
完成までに要する時間は変わりません。(下図参照。)
「女性がどれだけたくさん動員されところで、子供1人が生まれて
くるまで10月10日かかることに変わりはない」(「人月の神話」より)

人数
 1 ***************************
 2 ***************************
 3 ***************************
 4 ***************************
 5 ***************************
     月数



(3)分担はできるがサブタスク間でのコミュニケーションが必要な仕事

この場合、コミュニケーションを図る労力を、こなすべき仕事量に追加
しなければなりません。
教育、訓練、および相互コミュニケーションの負担が増えるのです。
したがって、人数の増加は(1)の場合ほどには効果的ではありません。
(下図参照。)

人数
 1 ***************************
 2 **********************
 3 ******************
 4 ***************
 5 *************
     月数


(4)複雑な相互関連を持つ仕事

仕事が複雑な相互関連を持つ場合、コミュニケーションを図るための
労力はさらに増大し、分担によってもたらされた各個人の作業時間
短縮をすぐに上回ってしまいます。(下図参照)

人数
 1 ***************************
 2 **************************
 3 ***************************
 4 *****************************
 5 ********************************
     月数


「仕事の各部分がそれ以外の部分と個別に調整されなければなら
ないから、そのための労力は、人がn人いれば、n(n-1)/2に比例する。」

「もしその要員が共同で問題解決にあたるための会議が必要になると、
事態は一層ひどくなる。」
                  (「人月の神話」より)



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  [5年後のシステム開発] 人数と時間の関係図についての注釈
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人数と時間の関係についての上記(1)〜(4)の図は、「人月の神話」
で書かれている図を、テキストで書きやすいように少し変えたものです。

「人月の神話」では、
http://www.kei-it.com/sailing/img/man-month.html のように
書かれています。



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  [5年後のシステム開発] 順次的であり、且つ、相互関連を持つ
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多くのソフトウェア開発作業は、上記(2)の「順次的に連続していて
分担できない仕事」という性格を持っています。

これは、開発プロセスが、ウォータフォール型でなく、漸増型の場合も
同様です。

(第66号「テスト、修正せずに機能追加」参照。
http://www.kei-it.com/sailing/66-050314.html )


また、チームで開発する場合には、チーム内での教育、訓練、および相互
コミュニケーションの負担が発生します。

そして、サブタスク単位で分割した場合には、そのサブタスクを担当した
チーム間で、相互コミュニケーションの負担が発生します。

したがって、システム開発のプロジェクトは最も成功している場合でも、
(3)の状態であり、少し複雑になると、すぐに(4)の状態になって
しまいます。

「だから、要員を追加することが、スケジュールを長引かすことは
あっても、短くすることはないのである。」(「人月の神話」より)



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  [5年後のシステム開発] ブルックスの法則への反対意見
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上記、仕事の4分類と、そのそれぞれによって異なる人数と時間の関係は、
システム開発だけでなく、事務、営業、企画、肉体労働などでもごく
日常的に観察できることでしょう。

この理論が、ブルックスの法則の根拠となっています。

そして、ブルックスの法則は今でも、一般には、正しいとされています。

(でも、遅れているプロジェクトへの要員追加は世界中で相変わらず
行われていますが・・・。)


しかし、レイモンド氏は「伽藍とバザール」の中で、ブルックスの法則に
対して次のような反対意見を述べています。
( http://cruel.org/freeware/cathedral.html 参照)

・ブルックスの法則が唯一無二の真理なら、Linux はあり得なかっただろう。

・開発コーディネーターが、最低でもインターネットくらい使える
 メディアを持っていて、圧力なしに先導するやりかたを知っている
 場合には、頭数は一つよりは多いほうが絶対にいい。 


次回以降で、次の方向で考察を続けます。

・レイモンドが「頭数は一つよりは多いほうが絶対にいい」と主張
 している理由。

・「人月の神話」の本を読まずに「人月の神話」という言葉だけを
 知ってる人の誤解。



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  次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

技術系:
・OSS(贈与と交換、ピアレビュー)
・SEO対策
・WEB2.0
・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)

外国系:
・中国は脅威か?

法務系:
・コンプライアンス

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主


次号は、4月10日発行予定です。

乞うご期待!!



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