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SE・プログラマの資質
○:その他

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_/_/_/_/_/_/_/  ソフトウェア業界 新航海術  _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第27号  2004/06/07
  ▼  まえがき
  ▼  [5年後のシステム開発] プログラマになりたい元営業マン
  ▼  [5年後のシステム開発] 専門家は保護を必要とする弱い存在
  ▼  [5年後のシステム開発] 専門家の方が弱い立場にいる
  ▼  [5年後のシステム開発] 中高年技術者の職を保証するもの
  ▼  [5年後のシステム開発] 二つの道
  ▼ 次回以降の予告

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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。

今回は「5年後のシステム開発」と「金持ちソフト会社」の両方に
関わることです。


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  [5年後のシステム開発] プログラマになりたい元営業マン
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元営業マンが3ヶ月位スクールに通って「プログラマになりたい」と
言って慶に応募してくることがたまにあります。

その人に「なぜプログラマになりたいのですか?」と聞くと、大概
「手に職を付けたいから」と答えます。
彼は「営業マンは会社がつぶれたら路頭に迷うし、たとえ転職できた
としても一からのやり直しになり、月給も半分以下に減る。
それに対し、プログラマのように手に職のある人は会社がつぶれても
職に困らないし、転職しても月給は減らない」と言います。

「営業は業種・会社特殊的な技能であり、その業種や会社を離れたら
価値を認められないのに対し、プログラミングは汎用的な技能であり、
別の業種や会社でも同等の評価を得ることができる」と彼は言いたい
のでしょう。


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  [5年後のシステム開発] 専門家は保護を必要とする弱い存在
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しかし、ロバート・キヨサキはその元営業マンとは正反対の考え方を
しています。

米国では学校教師、医者、パイロットなどの専門性の高い職業ほど、
労働組合が強大です。
ロバート・キヨサキは「過度な専門化こそが組合による保護の
必要性を生み出した原因である」と言います。
つまり、専門家は保護を必要とする弱い存在なのだと言うのです。

専門家というものは、「たった一つの産業でしか通用しない技能を
習得するために生涯を捧げる」人たちです。
そして人生をかけて獲得したその技能は、ほかの産業では通用
しません。

下記は「金持ち父さん 貧乏父さん」からの引用です。

> 10万時間という長い飛行経験があり年俸15万ドルをもらっていた
> 中堅パイロットでも、学校教師としてそれだけの給料をもらおうと
> 思ったら、かなりむずかしい。
> 技術は産業から産業へと必ずしも使いまわしできるものではない。
> 航空会社でパイロットがそれに対して給料をもらっていた技術は、
> ほかの産業、たとえば教育の世界では同じだけの価値を持っていない。

> 専門性を高めれば高めるほど動きがとれなくなり、その専門的
> 技能に頼りきりになる

そして、ロバート・キヨサキは、セールスとマーケティングこそが
成功するために必要な最も汎用的で重要な能力であると教えます。

> 専門的な技術の中でもっとも大事なのはセールスとマーケティング、
> つまり売る能力だ。その基本になるのは、相手が顧客であれ
> 従業員であれ、上司、配偶者、また子供であれ、他人と意思を
> 疎通させる能力だ。人生で成功するのに必要不可欠なのは、書く、
> 話す、交渉するといったコミュニケーション能力だと言ってもいい。



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  [5年後のシステム開発] 専門家の方が弱い立場にいる
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冒頭に例にあげたプログラマになりたい元営業マンは下記の点を
理解していません。

・営業こそ汎用的な技術である
・プログラミングは特殊な技術である。
・一般に特殊な技術者の方が職業に関して弱い立場にいる。

ある特定分野に特化した技術者は、自らの経済基盤となる技術が
大きく変化し、それについて行けず、市場からはじき出される
危険性と隣り合わせに生きています。
また市場規模自体が縮小したり、消滅したりすることすらあります。

第12号では下記の例を上げました。

> 産業革命で織物の大量生産が可能になったとき、多くの機織職人
> が職を失いました。
> そこまで時代をさかのぼらなくとも、20年前、ワープロの登場により、
> 和文タイピストという職業が消滅しました。

他にも、キーパンチャーやコーダー(プログラマの指示の下で
コーディングだけする人)やオフコンプログラマも消滅しました。

ソフトウェア業界は他業界に比べて技術変化が激しく、技術者が
拠って立つ技術は常に新しい技術からの挑戦を受けることになります。


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  [5年後のシステム開発] 中高年技術者の職を保証するもの
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しかし、いたずらに不安になる必要はありません。
システム開発の付随的な部分は変りますが、本質的な部分は変わら
ないからです。
(システム開発の付随的部分と本質的部分については、第4号参照)

ソフトウェア開発の本質的難しさは不可視性・可変性・複雑性・
同調性であり(第23号参照)、それは容易に攻略できる相手では
ありません。
したがって、ソフトウェア開発の本質的難しさに真正面から向かい
合っている技術者は、技術の変化を心配する必要はありません。

多くの営業マンは60歳過ぎても営業マンとして働き続けることが
できます。
それに対して、ソフトウェア技術者は60歳過ぎてもソフトウェア
技術者として働き続けることはできるのでしょうか?
付随的部分で働いているソフトウェア技術者にとっては不可能な
ことです。付随的部分は変化していきますし、存在しなくなる
可能性すらあるからです。
しかし、本質的部分で働いているソフトウェア技術者にとっては
可能なことです。本質的な部分は変わらないからです。

中高年の営業マンの仕事を保証するものは、営業という仕事の汎用性と
企業にとっての本質的重要性です。企業活動の本質が金儲けである
という意味において、営業は企業の基本です。
一方、中高年のソフトウェア技術者の職を保証するものは、
ソフトウェア開発の本質的難しさです。
難しいが故に需要が無くならない、できる人が少ないが故に
供給が少ない。このことが彼の職を保証しているのです。


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  [5年後のシステム開発] 二つの道
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しかし、ソフトウェア開発の本質的難しさに真正面から向かい合う
ということは並大抵のことではありません。
文字通り血のにじむ努力が必要なのです。

「今のわたしがあるのは、血のにじむような努力の結果だ、ということ
が知れ渡れば、これほどうらやましがられずはすまいに。」
(ミケランジェロ)

結論として言えることは、中高年になってもソフトウェア技術者として
活躍するためには、下記の二つの道しかありません。
・血のにじむような努力を厭わず、ソフトウェア開発の本質的
 難しさに真正面から向かい合うこと。
・セールスとマーケティング能力を磨き、営業寄りのSEになること。



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  次回以降の予告
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次号は、6月14日発行予定です。乞うご期待!!


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役  蒲生 嘉達
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TEL:03-5951-8490  携帯:090-1258-6347


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