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SE・プログラマの資質
○:その他

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_/_/_/_/_/_/_/  ソフトウェア業界 新航海術  _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第28号  2004/06/14
  ▼  まえがき
  ▼  [永久運動の設計] はじめに
  ▼  [5年後のシステム開発] まえがき:減らない赤字プロジェクト
  ▼  [5年後のシステム開発] まえがき:責任転嫁と自責と
  ▼  [5年後のシステム開発] まえがき:癒しと励ましと叡智を
  ▼ 次回以降の予告

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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。

今号は2部構成となっています。

第1部は「永久運動の設計」シリーズです。
今号から「永久運動の設計」シリーズをスタートします。
今までの「金持ちソフト会社」シリーズが一般論だったのに対し、
「永久運動の設計」シリーズはより事業計画に近い書き方をします。
本として出版するときは、「金持ちソフト会社」の中に入れる
かもしれません。

第2部は「2010年のシステム開発」を出版するときの「まえがき」
です。


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  [永久運動の設計] はじめに
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「永久運動の設計」シリーズを開始するヒントとなった二つの文章
を紹介します。

最初は、Don Libes & Sandy Ressler著「Life with UNIX」の中の
文章です。

> UNIXシステムのアーキテクチャは、新しいコンピュータの世界を
> 模索するために設計されている。UNIXは絶えず自分自身を改善
> していく土台であり、そこから革新的なソフトウェアや
> ハードウェアが誕生するのである。・・・(中略)・・・
> UNIXは見事に開かれたシステムである。この開放性は与えられたり
> 認可されたものではない。これはシステムの基調をなす
> アーキテクチャの特質なのだ。・・・(中略)・・・
> もちろん、UNIXは万能ではない。すべての問題を解決するわけ
> にはいかないが、今ある問題に取り組むのに最高の土台を与えて
> くれる。・・・(中略)・・・
> UNIXの誕生以来、UNIXマシン上で常に革新的なアイデアが育って
> いくのを我々は目撃してきた。 

OSの世界でUNIXがそうであったように、慶が
・新しい世界を模索する会社
・恒常的に発展していく会社
・絶えず自分自身を改善していく会社
・常に革新的なアイデアが育っていく会社
・開放的なアーキテクチャの会社
・今ある問題に取り組むのに最高の土台を与えてくれる会社
であるためには何が必要なのでしょうか?

二つ目はマーク・ヴィクター・ハンセン&ロバート・アレン著
「お金持ちになれる1分間の魔法」中の文章です。

> プロジェクトがいったん立ち上がって走り出したら、あとは
> 自動操縦に任せるべきだ。・・・(中略)・・・
> そうすれば次のプロジェクトや課題に集中できるからだ。思考と
> 創造のエネルギーを、永久運動システムの設計に集中させよう。 

「初期の集中、自動操縦への切り替え、次の課題への集中」
これこそ恒常的に発展していく会社の姿であり、「永久運動の設計」
シリーズの名前もここから取りました。



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  [5年後のシステム開発] まえがき:減らない赤字プロジェクト
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平成15年11月17日号の日経コンピュータに「プロジェクト成功率は
26.7% 2003年情報化実態調査」という記事が載っていました。
日経BP社が大手から中堅・中小に至る1万2546社を対象に
アンケート調査したところ、プロジェクトの成功率は26.7%
という結果が出たそうです。
QCD(Quality:品質 Cost:コスト Delivery:納期)全てに
おいて当初の計画通りの成果を収めたプロジェクトだけを「成功」
とみなしたそうです。この数字は私の実感ともほぼ一致しています。

また、平成16年2月23日号のコンピュータの「プロジェクトマネジ
メント再入門」という記事では、「プロジェクトマネジメントの
重要性が国内で喧伝され始めてから数年たった。だが、赤字プロ
ジェクトの数はいっこうに減らない」と書かれています。
これも私の実感と一致しています。
周りを見渡しても、多くのソフト会社が赤字プロジェクトを抱えて
苦境にあえいでいます。


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  [5年後のシステム開発] まえがき:責任転嫁と自責と
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失敗プロジェクトの渦中にいる技術者は、大変なストレスの下で、
毎日終電、徹夜、休日出勤といった長時間労働を強いられます。

そして、そのプロジェクトの内外では責任転嫁と自己正当化の嵐が
吹き荒れます。
誰もが「自分が悪いのではない」と言います。
そして、次のようなことを言います。
・納期を守れないのはリーダの管理能力の欠如。(顧客・上司)
・品質が悪いのは技術者のスキル不足。(顧客)
・仕様を確定しない顧客が悪い。(リーダ・メンバ)
・メンバのスキル不足が失敗の原因。(リーダ)
・メンバの○○君がプロジェクトの足を引っ張ったのだ。
(リーダ・メンバ)
・安易に仕様変更を受けてしまうリーダが悪い。(上司・メンバ)
・無理な仕事を取った営業が悪い。(リーダ・メンバ)
・赤字は収支管理ができないリーダの責任。(上司)
・一括請負はもともと危険なもの。やれと言われてやって、失敗すると
 全て現場の責任にされてしまう。(リーダ・メンバ)

責任転嫁が横行する一方で、自分自身を責め、自信を失う人も
出てきます。
・自分のせいでプロジェクトは失敗した。(リーダ・メンバ)
・自分はプログラマに向いていない。(メンバ)
・自分には人や金の管理ができない。(リーダ)


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  [5年後のシステム開発] まえがき:癒しと励ましと叡智を
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しかし、責任転嫁も自己正当化も自責も建設的なものではありません。

ほんの少し高い視点から世界を眺めて見ましょう。
ほんの少しだけ高い視点から眺めると、普段生活している街も
思いがけない様相を見せます。

・システム開発は昔も今も本質的に難しいものです。
・とりわけ1990年代以降は低価格化・短納期圧力が高まりました。
・とは言っても、成功することが不可能なわけではありませんし、
 失敗プロジェクトの当事者に自己責任が無いわけでもありません。

本書の目的は、ソフトウェア業界にいる技術者、管理者、経営者に
見晴台を提供することです。

高原の見晴台に立って、「我々はどこから来たのか、今どのような
状態なのか、我々はどこに向かえばよいのか」思索している技術者を
イメージしながら本書を執筆しました。

本書がソフトウェア業界にいる方々に癒しと励ましと叡智を提供
できることを祈って。



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  次回以降の予告
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次号は、6月21日発行予定です。乞うご期待!!
「永久運動の設計」シリーズで、組織論的なところを書きたいと
思っています。


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役  蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490  携帯:090-1258-6347


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