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第46号  2004/10/25
  ▼  まえがき
  ▼  [永久運動の設計] 巨大組織がかかりやすい病気
  ▼  [永久運動の設計] 大企業が有利でなくなる理由
  ▼  [永久運動の設計] 超巨大企業の時代へ
  ▼  [永久運動の設計] 次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは2003年12月8日に創刊され、第32号(2004年7月12日号)
までは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している個人
事業主の方々のみに配信していましたが、第33号からは一般の方々
にも公開しております。
発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/ で、
バックナンバーを見ることができますし、バックナンバーの全文検索も
できます。

読者数が増えれば、ソフトウェア業界の情報発信基地へと発展させていき、
業界に新しい流れを作っていきたいと願っております。

本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非
本メルマガの存在を教えてあげてください。



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  [永久運動の設計] 巨大組織がかかりやすい病気
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第45号( http://www.kei-it.com/sailing/45-041018.html )では
「規模の経済」「範囲の経済」の解説をしました。

一般に大企業は規模が大きくなり、範囲が大きくなる方が、生産費用が
低下します。
多くの企業が本能的に規模を拡大したがり、多角化したがる理由は
実はここにあるのです。

もちろん、組織が大きくなることによるデメリットもあります。
非効率になり、共同体化し、鈍重になっていくのです。

堺屋太一氏は「組織の盛衰」で、豊臣家、帝国陸海軍、日本石炭産業を
例にあげて巨大組織が崩壊していく様を解説しています。
組織は巨大化すると、次のような病気にかかりやすいのです。

(1)人事圧力シンドローム
社員からの昇進・賃上げ要求が強まりすぎると、無謀な事業拡大を
してしまうこと。(豊臣秀吉の朝鮮出兵のように)

(2)共同体化による機能の低下
組織としての機能よりも、構成員の満足と組織そのものの拡大を
求めるようになること。(帝国陸海軍のように)

(3)環境への過剰適応・成功体験への埋没
ある環境で成功し、その環境に過剰適応してしまうと、環境が変
わって業績が悪化しても、環境変化に適応できなくなること。
(日本石炭産業のように)

身近な大企業や公官庁を観察しても上記傾向は感じられるでしょう。


しかし、1980年代までは日本の大企業は「規模の経済」「範囲の経済」
のメリットを享受していました。
巨額の資金を使って生産設備や人に投資してますます繁栄していく
大企業とそれを支えている優秀な下請け・系列企業という図式が、
支配的でした。



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  [永久運動の設計] 大企業が有利でなくなる理由
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しかし、1990年代以降、「今後は大企業が必ずしも有利でなくなる」
という見方が出てきました。

例えば、先に言及した「組織の盛衰」(1993年出版)で、堺屋太一氏は
「今後は組織は非属人的で大規模なフィルハーモニー型から属人的で
小規模なジャズバンド型へと変わっていくであろう」という見方を
示しています。
それ以外にも多くの論者が、今後は大企業が必ずしも有利でなくなると
説いています。その根拠は次の通りです。


【生産手段が安価になる】
IT系新興企業の生産手段(PC、情報インフラなど)は従来の大量生産型
企業の工場や機械と比べると安価です。
最近プロ野球参入問題で話題となっている楽天やライブドアは、
今でこそお金持ちですが、事業開始時に巨額の投資を必要としたわけ
ではありません。

【重要なのはアイデアとノウハウ】
従来の大量規格生産型の産業では、生産手段(工場や機械)が良ければ
安くて良い製品ができました。だから高価な生産手段を購入できる
大資本が有利だったのです。
しかし、IT系新興企業はアイデアやノウハウが命であり、生産手段が
良ければ良い製品できるということはありません。
高いコンピュータを買えば面白いサービスを提供できるわけではない
のです。

【情報格差がなくなる】
かつては情報のルートが限られていて、大企業でなければ手に
入らない情報が多かったのですが、インターネットの普及によって、
均質な情報が誰でもどこでも手に入るようになりました。
コンピュータの世界ではIBMや富士通内部にいなければ最先端の
情報が手に入らなかった時代もありましたが、現在では多くの
研究者、技術者、企業が最先端の情報をインターネットで公開
しているので、大企業でなければ手に入らない技術情報は少なく
なりました。

【顧客開拓が容易】
かつては「大手と下請け」「大手の系列」「長年のつきあい」
という関係で仕事が流れました。
しかし、インターネットの普及によって顧客や提携相手を全世界的に
求めることができるようになりました。

【標準化が進んだ】
標準化が進んだことにより企業間での分業が容易になりました
広い分野を自足的に行なう巨大企業よりも、専門の分野で高度な
能力を持つ企業同士が連携するほうが効果的になったのです。



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  [永久運動の設計] 超巨大企業の時代へ
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必ずしも大企業が有利でなくなり、大企業のデメリット(非効率性、
共同体化など)がそのままであるとすると、中小企業が繁栄する時代に
なるはずです。

しかし、現実を観察すると世の中はそのようには動いていないことが
分かります。

銀行は統合を繰り返し、メガバンクが誕生しています。
日本の銀行は不良債権問題に苦しんでいるから統合するという面も
ありますが、それだけではなく、全世界的に金融の再編成、寡占化が
進んでいるのです。

自動車業界も全世界的に再編成が進み、日本でも日産、マツダ、
三菱などが外資の傘下に入りました。

通信業界、流通業界でも再編成と寡占化が進んでいます。

IT業界に目をやれば、マイクロソフト、アマゾン、IBM、オラクル
など巨大企業は次々と他の企業を買収しています。
2003年6月2日にピープルソフトがJDエドワーズを買収したら、6月6日
にはオラクルはピープルソフト自体を買収してしまう対抗措置を打ち
出しました。

第45号( http://www.kei-it.com/sailing/45-041018.html )で
「規模の経済」の例にあげたリクナビやリクナビNEXTはかつてない
ほど強大になっています。

「大企業の時代」から「中小企業の時代」になるのではなく、
「超巨大企業の時代」になってしまったようなのです。

> 資金はないが強力なアイデアを持つ小規模で身軽な企業が
> 前途洋々した新興企業になれる、というような伝説はもはや
> 成り立たないのだ。
> (ジョン・シーリー・ブラウン、ポール・ドゥグッド著
> 「なぜITは社会を変えないのか」より)




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  [永久運動の設計] 次回以降の予告
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次号では、「超巨大企業の時代」についてより詳しく分析し、その中
での中小企業の生き方を探ります。

次号は、11月1日発行予定です。乞うご期待!!



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