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第57号  2005/01/10
  ▼  まえがき
  ▼  [保存できないエディタ] 一括請負の仕様バグ
  ▼  [保存できないエディタ] 有償追加派の言い分
  ▼  [保存できないエディタ] 無償追加派の言い分
  ▼  [保存できないエディタ] 読者の見解募集
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達です。

IT Proに「“倍速開発”掲げるソフトハウスの慶、自社フレーム
ワークを社外提供へ」という記事が載りました。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20050106/154491/ 参照。
この記事は日経コンピュータEXPRESSのトップページ「ニュース」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/NC/ からリンクされています。


さて、これから数回にわたるテーマは次のとおりです。

(1)請負開発(準委任を含む)の本来あるべき姿を明らかにします。
(2)ソフトウェアにおける品質管理(QC)。
(3)慶ITサービス事業部を具体例として、準委任を中心とする
 ソフトウェア会社の最適な組織について考察します。
(4)慶WEBシステム開発事業部を具体例として、一括請負を中心とする
 ソフトウェア会社の最適な組織について考察します。

これらのテーマは相互に関連しています。


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  [保存できないエディタ] 一括請負の仕様バグ
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請負開発の本来あるべき姿を論じるきっかけとして、一括請負での
仕様バグについて考えてみます。

例えばシステムの一部にエディタ機能があり、要求仕様ではその機能は
「テキストファイルを読み込み、画面に表示し、編集し、印刷できること」
と書かれていたとしましょう。
保存機能については何も書かれていませんでした。

このシステム開発を請負った会社が、要求仕様どおり、保存機能の
無いプログラムを納品しました。
すると、顧客は、「エディタとして当たり前の機能なのだから」と
言って無償で機能追加することを要求してきました。

この要求に対して請負会社の社内でも有償追加派と無償追加派に意見が
分かれました。両者の言い分を聞いてみましょう。それぞれ正論です。


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  [保存できないエディタ] 有償追加派の言い分
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我々(請負会社)は下記の約束をしています。
・納期までにプログラムを提供すること。
・そのプログラムが、約束した全ての機能を備えていること。
・また、しないと約束してる動作は一切しないこと。

たとえ、プロジェクトが赤字になったとしても我々は上記を保証します。
約束を守れなければ、契約不履行となり、損害賠償まで請求される
可能性もあるのです。

しかし、これは逆に言えば、「できると約束していないこと」は
できなくても契約違反にはならないということです。

ユーザは要求仕様について合意しました。
したがって、我々は仕様を満たすプログラムを書きさえすればよいのです。
いかなる変更も追加請求の対象となります。

プログラムで一般的な使い方をする人が期待するごく基本的なことさえ、
できなかったとしても、(それが要求仕様に含まれていないなら)
仕方がありません。
仕様のバグを修正するには、顧客は追加料金を払うしかないのです。


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  [保存できないエディタ] 無償追加派の言い分
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それに対し、無償追加派は次のように反論します。

そもそもソフトウェアの品質とは何でしょうか?
顧客の多くは、明確に仕様を定義してくれるわけではありません。
ソフトウェアの品質というものは顧客の満足度であって、仕様に
合っていることではありません。
ソフトウェアのバグとは、「仕様に合っていないこと」ではなく
「エンドユーザが期待しているような動作をしないこと」なのです。
エディタの保存機能などはごく一般的なユーザが期待する機能なので、
無償で機能追加しなければなりません。

また、請負会社は契約締結時、システムの利用目的を知り得たはずです。
システム開発の専門家なら、その利用目的から保存機能が必要である
ことは十分に推測できたはずです。
したがって、これはシステムの目的から導かれる黙示の仕様なのです。
やはり、無償で機能追加しなければなりません。


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  [保存できないエディタ] 読者の見解募集
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「保存機能のないエディタ」はあまりにも極端な例ですが、
似たようなことは一括請負の現場でよくあることです。

例えば、去年、慶でも、顧客の現場担当者が作成した仕様どおり
プログラムを作成したところ、後からその担当者の上司に「あの仕様は
間違えていた。慶さんもシステム開発のプロならあの仕様がおかしい
と思ったはずです」と言われ、無償で追加変更を求められたことが
ありました。

さて、あなたは有償追加派でしょうか無償追加派でしょうか?
次号で私の見解を述べますが、読者の方々も見解をお持ちなら、
是非メールで教えて下さい。

本号は第10号 http://www.kei-it.com/sailing/10-040209.html と
関連していますので、参考にしてください。


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  次回以降の予告
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次号は、1月17日発行予定です。
有償追加、無償追加のどちらが正しいのか明らかにします。
乞うご期待!!


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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると
思います。
したがって、第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々
にも公開することにしました。


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