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第89号  2005/08/22
  ▼  まえがき(8/24セミナー残席あり)
  ▼  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度のミソ:資格等級と職位の分離
  ▼  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度の昇格が年功的である理由
  ▼  [賃金決定の仕組み] 賃金制度関係の3冊の本
  ▼  [賃金決定の仕組み] 責任等級制度
  ▼  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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  まえがき(8/24セミナー残席あり)
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。
このテーマはあと数回続きそうなので、また、一旦終了しても、
断続的に続きそうなので、「永久運動の設計」シリーズから独立させて
「賃金決定の仕組み」シリーズとしました。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。


さて、第88号でお知らせしたとおり、慶が所属している業界団体
「羅針盤21」http://r-21.jp/ で、成果主義をテーマとした研修会を
行います。

【日時】8月24日水曜日13:30〜17:00
【場所】トスラブ市ヶ谷アルファーロ
【テーマ】本当の意味での成果主義型報酬体系とは何か?
【講演会内容】
 13:30〜14:00 導入(蒲生)
 14:00〜15:00 講演(人事労務コンサルタント内藤講師)
 15:00〜15:15 休憩
 15:15〜16:00 講演(人事労務コンサルタント畑中講師)
 16:00〜16:45 ディスカッション
 
会場を大きな会議室に変更したので、まだ5名ほど空きがあります。
本来は羅針盤21の会員しか出席できませんが、本メルマガの読者は
無料でご招待いたしますので、聴講を希望される方は
office@kei-ha.co.jp にメールでお申し込みください。

冒頭の30分で私が用語などの基礎知識を解説しますので、人事・給与に
詳しくない方でも十分に理解できるセミナーになると思います。



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  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度のミソ:資格等級と職位の分離
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第88号で解説した職能資格制度についてもう少し話します。

(1)職能資格ごとの基本給テーブル
職能資格制度では職能資格ごとに基本給テーブルがあります。
例えば社員1級には社員1級用の基本給テーブルがあり、社員1級の人は
そのテーブルの中で給料が上がっていきます。
そして、その社員が社員2級になるだけの能力を身に付けたと会社が
判断したときに、その社員は社員2級に昇格し、その後は社員2級用の
基本給テーブルにもとづいて給料が上がっていきます。

(2)等級の昇格は必ずしも昇進を約束しない
職能資格制度では、等級と職位とがある程度は関連付けられています。
例えば「係長は社員5級でなければなれない」などのように。

しかし、これは「社員5級になれば全員係長になれる」という意味では
ありません。ここが職能資格制度のミソです。

基本給テーブルが変わるのですから、賃金は資格等級に連動します。
そして、昇格のスピードが人によって違うとは言っても、後述のように
昇格は年功的に運用されやすいので、年配者の方が若者よりも賃金は
高くなります。
職能資格制度は賃金面では年功序列的なのです。

しかし、職能資格制度においては、資格等級(そしてそれに連動する賃金)と
職位とは直接的には連動しません。
等級の昇格は必ずしも職位の昇進を約束しないのです。
30歳で課長になる人もいれば、40歳で役職なしという人もいるのです。
職能資格制度は職位面では能力主義的なのです。

職能資格制度のこの二面性が下記の相反する要求を解決してきました。
・社員のニーズ:結婚したり子供ができたりすると必要となるお金が
        増えるので、50代前半までは定期昇給して欲しい。
・会社の事情:ポストには限りがあり、誰でも昇進させるわけにはいかない。



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  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度の昇格が年功的である理由
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職能資格制度の昇格が年功的である理由について、もう少し掘り下げて
みましょう。

(1)最低経過年数をベースに決められてしまう
先に「その社員が社員2級になるだけの能力を身に付けたと会社が
判断したときに、その社員は社員2級になり・・・」と書きました。

この判断は会社が固有に定めた職能要件定義を基準にして行われます。
職能要件定義には、例えば「営業職の○○資格等級では、○○の
仕事を任せられて、○○の能力が要求される」というようなことが
書かれています。

しかし、このような職能要件定義は抽象的な表現にならざるを得ないので、
実際には、それぞれの等級で定められている最低経過年数をベースに
決めてしまいます。それが唯一の数値的基準だからです。
成績の良い人は最低経過年数で昇格し、成績の悪い人はほんの少し
(1年〜3年)遅れて昇格します。

(2)下げられない
また、職能給はその人の能力に対する賃金なので、成果が出たからと
言って急速に上げることができないかわりに、成果が出なかったからと
言って下げることもできません。
年齢給と同じく、基本的に下げられないのです。
したがって、これまでの日本企業は成果は賞与に反映させてきました。



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  [賃金決定の仕組み] 賃金制度関係の3冊の本
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最近、賃金制度関係で下記の3冊の本を読みました。

(1)リストラと能力主義 森本卓郎 講談社現代新書
(2)虚妄の成果主義 高橋伸夫著 日経BP社
(3)デフレに克つ給料・人事 蒔田照幸著 文春新書


3冊とも非常に有益な本でした。

「リストラと能力主義」は、「年功制は製造業においては今後とも
重要な制度であり続けるであろうが、知的創造的職業では成果主義で
行かなければならない」というようなことを主張している本です。

一方、「虚妄の成果主義」は「成果に連動した賃金体系は、内発的
動機づけを低下させ、その結果として満足感を減少させてしまう。
また、基準をクリアするために働くようになり、ベストを尽くすことが
なくなる」と成果主義を徹底的に批判した本です。
高橋伸夫氏は職能資格制度に基づく年功制の復活を主張しています。

どちらが正しいのかは、次号以降に議論したいと思います。

残りのもう一冊、「デフレに克つ給料・人事」は上記の2冊とは趣の
違う本です。
上記2冊は学者が書いた本なのに対し、「デフレに克つ給料・人事」は
実際に多くの会社の賃金制度を設計してきたベテランコンサルタントが
書いた本なので、非常に具体的、実践的です。

蒔田照幸氏が強く推薦している制度は「責任等級制度」です。
私は「職能等級」「職務等級」は知っていましたが、「責任等級」という
言葉はこの本で初めて知りました。
しかし、Googleで「責任等級」で検索すると189,000件、「責任等級制度」
では77,000件ヒットするところを見ると、広く普及している制度のようです。



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  [賃金決定の仕組み] 責任等級制度
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最近、私が立て続けに賃金関係の本を読んで研究している理由の一つは、
慶のスタッフ部門(事務・営業)の給与体系を見直したいからです。

現在、慶のスタッフ部門では独自の賃金テーブルがなく、技術職の
テーブルに無理やり当てはめて、賃金を決めています。

・スタッフ部門は人数が少なかった。
・会社として軌道に乗せることが先決だったので、ライン部門に比べて
 スタッフ部門の制度整備が遅れた。
・新卒が多かったので、まずは初任給にしておけばよかった。

などがその理由です。

しかし、それが限界に来ているので、スタッフ部門独自の給与体系を
早急に作ろうと思っています。

蒔田照幸氏が推薦している責任等級制度は慶(及び、他の中小ソフト会社)
のスタッフ部門の給与制度としては使えそうなので、次号で解説します。



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  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号は次のようなテーマで書く予定です。

・責任等級制度とは何か?
・成果主義とは何か?
・ソフトウェア会社と成果主義



次号は、8月29日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
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