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第91号  2005/09/05
  ▼  まえがき
  ▼  [賃金決定の仕組み] 「虚妄の成果主義」で面白かった二つの点
  ▼  [賃金決定の仕組み] 日本型年功制:会社固有の熟練を身につけようとする
  ▼  [賃金決定の仕組み] 日本型年功制:競争心をあおるのに有効
  ▼  [賃金決定の仕組み] これから先の未来の付き合いが長ければこそ
  ▼  [賃金決定の仕組み] アクセルロッドの理論は幅広い応用が可能
  ▼  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。
このテーマはあと数回続きそうなので、また、一旦終了しても、
断続的に続きそうなので、「永久運動の設計」シリーズから独立させて
「賃金決定の仕組み」シリーズとしました。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/
コメント、トラックバック、大歓迎です。



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  [賃金決定の仕組み] 「虚妄の成果主義」で面白かった二つの点
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高橋伸夫著「虚妄の成果主義」で非常に面白かった点が二つあります。
一つは第90号「給与は動機づけの中心ではない」「人事面での基本的な指針」
で述べたことです。重要なことなので、復習しておきましょう。

 給与や作業条件は、生産性や職務満足よりも欠勤・離職と密接に
 結びついています。
 つまり、給与や作業条件が悪いと欠勤・離職が増えます。
 しかし、給与や作業条件を良くしても、生産性や職務満足にはあまり
 影響がありません。
 生産性向上や職務満足をもたらすものは、自分が有能であるという感覚、
 自己決定度、そして、将来への見通しです。


二つ目は、高橋伸夫氏が日本型年功制を支持する根拠の一つとして、
「これから先の未来の付き合いが長ければ、人は紳士的で寛容になる」
ということを挙げている点です。

それについて語る前に、日本型年功制の良さとして、一般に指摘
されていることをお話ししておきましょう。



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  [賃金決定の仕組み] 日本型年功制:会社固有の熟練を身につけようとする
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日本型年功制の利点として、まず第一に挙げられることは、
「社員が会社固有の熟練やノウハウを身につけようと努力する」
ということです。

> 将来会社を解雇されたり、給与を大幅に減額される可能性があったら、
> 会社に言われるままにキャリアを積んで、会社のなかでしか役に
> 立たない職業能力を身につけるよりも、他社で通用する職業能力を
> 身につけておいたほうがずっとましだと多くの労働者は考えるだろう。
>          (森本卓郎著「リストラと能力主義」より) 



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  [賃金決定の仕組み] 日本型年功制:競争心をあおるのに有効
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日本型年功制の良さとして、次に挙げられることは、「社員間の競争心
をあおるのに非常に有効なシステムである」ということです。

これは読者にとっては意外なことかもしれません。
日本型年功制の特徴は「ある程度の年齢になっても賃金格差をつけない
ということ」(森本卓郎氏)です。

その特徴が、何故、「社員間の競争心をあおるのに非常に有効」に
なるのでしょうか?
普通に考えると、成果主義を導入し、大きな賃金格差をつける方が、
競争心をあおるような気がします。

しかし、人間の心理というものは、そのように単純なものではありません。

大きな賃金格差がある中で、低い評価を受けた側はやる気を失って
しまいます。
「全員のインセンティブを高めようと思ったら、いつでも逆転できると
思わせる小さな格差をつけるほうがはるかに有効なのだ」(森本卓郎氏)

また、日本型年功制の下では、同期のライバルとのほんの少しの昇給、
昇進の差が、猛烈な競争心をあおり立てるのです。
高橋伸夫氏は「虚妄の成果主義」で次のような、少し感動的な実話を
紹介しています。

 かつて年功序列的と揶揄された会社に、同期で優秀な新入社員が
 二人入ってきた。数年たった時、理由はよくわからないのだが、
 月給で数百円差がついていることに気がついた二人は、一方は自分
 の方が評価されていると張り切り、他方はあいつには負けれないと
 頑張り、二人して出世街道をばく進する。
 結局、たった数百円とはいえ、この差がついたままで二人は同時に
 取締役まで駆け上がり、ようやく月給が同じになる。

そして、高橋伸夫氏は「より年功序列的であればあるほど、給料の差が
競争心をあおることになる」と指摘します。



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  [賃金決定の仕組み] これから先の未来の付き合いが長ければこそ
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さて、冒頭に述べた、「虚妄の成果主義」で非常に面白かった点の
二つ目に戻りましょう。

高橋伸夫氏は「虚妄の成果主義」の中で、日本型年功制を支持する
根拠として、「これから先の未来の付き合いが長ければ、人は紳士的で
寛容になる」ということを挙げています。

「これから先の未来の付き合いが長ければ、人は紳士的で寛容になる」
「これから先の未来の付き合いが長ければ、敵同士も協調する」
という考え方は、アクセルロッドの「ゲーム理論をとり入れた進化生物学」
の理論によるものです。
( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4623029239/250-2149696-3733038 参照)

「その場限りの付き合いであるなら、人はずるいことをするが、
これから先の未来の付き合い(過去の付き合いではない)が長ければ、
人は協調的になる。
裏切ったら、次は自分が裏切られるから、姑息なことはしない。
自分のことだけでなく、相手のことも考えるようになる。
一人勝ちではなく、共存共栄を考えるようになる。
あるいは、そのような戦略をとった人が生き延び、繁栄する」
という理論です。

高橋伸夫氏は、終身雇用だとこれから先の未来の付き合いが長く
なるから、組織内で協調行動が生まれると主張しています。



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  [賃金決定の仕組み] アクセルロッドの理論は幅広い応用が可能
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私はアクセルロッドの理論は、非常に幅広く応用できると思っています。

これは、慶と社員の関係だけでなく、慶と個人事業主、慶と協力会社、
慶と顧客との関係、さらには業界団体の存在意義にも応用できる理論だと
思っています。

「保存できないエディタ」シリーズは、請負契約と実際の開発作業との
軋轢について扱っているシリーズですが、
( http://www.kei-it.com/sailing/back_editor.html 参照)
書いていて行き詰まりを感じて、現在お休みしています。
「これから先の未来の付き合いが長ければ、敵同士も協調する」
という理論は、ここでも突破口になるかもしれないと考えています。

会社と社員、社員同士、顧客と会社、会社と協力会社、ライバル会社同士
という利害関係が異なる者同士が、未来の付き合いの長さを前提にして
対立しながら協調するということは、日本人は得意であり、日本が米国、
中国、インドなどに負けないためには、それが不可欠だという展開も
考えています。



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  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号は次のようなテーマで書く予定です。

・責任等級制度とは何か?
・成果主義とは何か?
・ソフトウェア会社と成果主義



次号は、9月12日発行予定です。

乞うご期待!!



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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
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