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第150号  2006/10/23
  ▼  まえがき
  ▼  [慶2.0] (1)本当は社長に株を持って欲しいが、お金が無い
  ▼  [慶2.0] (2)資金繰りが苦しくて買収される
  ▼  [慶2.0] (3)内部留保で増資すれば税務署が喜ぶ
  ▼  [慶2.0] (4)外部資本を導入するか、役員が新たに出資するか
  ▼  [慶2.0] (5)役員報酬経由で会社に還流させる
  ▼  [慶2.0] (6)増資問題は次期体制問題
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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第149号から「慶2.0 本当の大変化はこれから始まる」シリーズを
開始しています。

次の10年で慶(及び類似した中小ソフトウェア会社)が目指すべき
方向性について、組織、営業、企画、労務など多方面から考察します。
題は「慶2.0」ですが、多くの中小ソフトウェア会社にとっても共通
の課題を扱います。

副題は、梅田望夫著「ウェブ進化論」を真似て、「本当の大変化は
これから始まる」としました。


「慶2.0」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー 慶2.0」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_kei2.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
「カテゴリー 慶2.0」(↓)を参照してください。
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/cat6545629/index.html



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  [慶2.0] (1)本当は社長に株を持って欲しいが、お金が無い
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先日、某中小ソフトウェア会社会長のA氏と食事をしました。

A氏は某中小ソフトウェア会社の創業者で、数年前にB氏に社長職を
譲り、現在は会長職に就かれています。
A会長は、現在も会社の株式の大部分を所有されています。

そのA会長が次のようなことをおっしゃっていました。

「本当はB社長に株を持って欲しいんだよ。
そうしないと、いつまでも私にお伺いをたてなければならないからね。
でも、今、彼には株を買うお金が無いんだ。」



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  [慶2.0] (2)資金繰りが苦しくて買収される
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さて、第149号で述べたとおり、中小ソフトウェア会社の資金需要の
一番目は、「売掛金と買掛金の差額」であり、二番目は「ソフトウェア
研究・開発」です。

「ソフトウェア研究・開発」はチープ革命が作用して、減っていく
傾向にありますが、「売掛金と買掛金の差額」は、これからの10年間も、
やはり、売上高に比例して増えていくことになります。

昨今の「偽装請負問題」は一言で言えば、「請負性を高め、さらに
再委託を減らせ(多重請負を減らせ)」ということですが、ソフト
会社が請負性を高め、再委託を減らそうとすればするほど、「売掛金と
買掛金の差額」は増えていくことになります。

ソフトウェア請負開発という業態を根本的に変えないかぎりは、
ソフトウェア請負開発会社にとって、資金調達は、極めて重要な
問題であり続けます。

 関連記事:第149号「慶1.0の貸借対照表」
 [B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/10/post.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/149-061016.html


慶の取引先でも、この1年間に売上高が3億円から6億円くらいの
ソフトウェア会社数社(慶の営業なら、D社、K社、O社、T社と
言えば分かるでしょう)が大手の傘下に入りました。
外見は様々に取り繕っていますが、実質的には買収です。

そして、大概「営業面や求人面で有利になるから」ということが、
大手の傘下に入る表向きの理由とされますが、最も大きな本当の
理由は、「資金繰りの苦しさ」でしょう。



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  [慶2.0] (3)内部留保で増資すれば税務署が喜ぶ
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企業の資金調達の方法は二つあります。借入と増資です。

借入については下記を参照してください。

 カテゴリー「借入と連帯保証」:
 [B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/cat6159743/index.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/back_kariire.html


今週号では、増資についてお話しします。

増資には、次の二つの方法があります。

(a)株式発行
(b)企業活動で得た利益の内部留保を資本金に組み込む


(b)の手法は、次の手順を踏みます。

 {税引前当期利益→納税→当期損益→内部留保}→増資
 (実際には{ }の中で数年間ループして内部留保を溜めます。)

1,000万円の内部留保を溜め、1,000万円の増資をするためには、
税率を40%とすると、約700万円の税金を払わなければなりません。

 税引前当期利益1,667万円×(1−税率40%)=内部留保1,000万円


慶は株式配当を出していませんが、配当を出している会社では、
内部留保を溜めることはさらに難しくなります。

上記手順で、当期損益と内部留保の間に、株式配当が入りますから。



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  [慶2.0] (4)外部資本を導入するか、役員が新たに出資するか
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したがって、中小企業では、一般に(a)株式発行の手法が採用されます。

株式発行には二つのやり方があります。

一つは、外部資本の導入。

上記D社、K社、O社、T社が採用したやり方です。
しかし、D社、K社、O社、T社の役員、社員のほとんどは退職した
と聞いています。
M&Aというものは、M&Aされる側にとっては、悲惨な結果となる
場合が多いのです。


もう一つのやり方は、「役員が新たに出資する」です。

しかし、ここで冒頭のA会長とB社長の話を思い出してください。
中小ソフトウェア会社のほとんどの役員は、ポンと1,000万円出せる
ほどお金を持っているわけではないのです。
中小ソフトウェア会社の役員報酬で、住宅ローンを抱えて、子供が
2、3人いれば・・・。



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  [慶2.0] (5)役員報酬経由で会社に還流させる
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では、どうしたらよいのでしょうか?

岡本吏郎氏は、役員報酬には会社のお金を積み立てる機能があると
主張しています。

> 役員報酬1000万円はサラリーマンの年収500万円程度なのです。
>  (岡本 吏郎著「会社にお金が残らない本当の理由」) 


岡本吏郎氏のこの言葉は「役員報酬1000万円だとしたら、役員が
自分の生活費として本当に使えるのは500万円で、残りの500万円は
会社の金だ」という意味です。

そして、岡本吏郎氏は、その金を「役員借入金」として会社に還流
させろと言っています。

しかし、個人事業の粋を脱したある程度の規模の会社では、通常は、
「増資」として会社に還流させる手法が採られるでしょう。



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  [慶2.0] (6)増資問題は次期体制問題
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慶2.0がこの手法を採るなら、次のようなことを考える必要があります。

役員報酬から増資分資金を捻出するとしたら、その増資用資金は
役員が私的に使えないよう、監督する必要が出てきます。
その役目を持つ機関は、監査役や取締役会でしょう。

また、出資する役となった役員は、増資後は株主としての権利を持つ
ことになります。
したがって、次期体制に応じてその役割を引き受けるべきでしょう。

冒頭のA会長の「本当はB社長に株を持って欲しいんだよ」という
言葉どおりに・・・。

つまり、中小企業にとって、増資問題は、会社としての次期体制の
問題でもあるのです。

当然のことながら、既存の役員の中だけで次期体制を考えるべきでは
ありません。
私も含めて役員は長期的には交代するものです。
役員登用と交代の仕組みも考えていかなければならないのです。

 関連記事:第135号「(5)人は確実に変わる」
 [B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/20_24cd.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/135-060710.html


また、増資問題は、分社化問題とも密接な関係を持った問題です。


話は尽きないのですが、今週号はこのくらいにしておきましょう。
何よりも大前提として粗利を増やさなければお話しになりませんから。



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  次回以降の予告
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次号は、10月30日発行予定です。

引き続き、「慶2.0 本当の大変化はこれから始まる」を書く予定です。
人事・労務問題とするか、営業問題とするか、・・・今のところ
まだ決めていません。


乞うご期待!!



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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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