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第186号  2007/7/9
  ▼  まえがき
  ▼  [会社の心臓] (1)出版は儲からない
  ▼  [会社の心臓] (2)印税だけで生活している人はほとんどいない
  ▼  [会社の心臓] (3)それでも出版したがる理由
  ▼  [会社の心臓] (4)「会計は会社の心臓」出版の理由
  ▼  [会社の心臓] (5)パッケージソフトは請負開発と組み合わせる
  ▼  [会社の心臓] (6)パッケージは営業やサポートの負担が大きい
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達です。

第185号で、「会計は会社の心臓」について、「もう少し加筆して、
今年中に普通の本として出版します」と予告しました。

 第185号:財務は重要だが主役ではない
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2007/07/post_0824.html


本日は、出版の話から始めて、ソフトウェア開発に言及します。



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  [会社の心臓] (1)出版は儲からない
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個人または会社の出版というものは単独の商売として考えた場合、
けっして儲かるものではありません。

大雑把に言って、1万5千冊くらい売れないと元は取れないのです。
その根拠は次のとおりです。

定価1,500円、初版の部数を1,000冊とした場合、初版時に出版社へ
支払う費用は、200万円前後です。

これには、編集、デザイン、印刷、広告宣伝、そして、書店への
営業やアフタフォローの費用が含まれます。

印刷された1,000冊は出版社が在庫として抱え、売れたら作者に印税が
支払われます。

印税率を8%とすると、1,000冊売れた場合、
定価1,500円×1,000冊×8%=12万円 の印税が出版社から支払われます。

費用が200万円で印税が12万円なので、粗利は-188万円の赤字となります。



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  [会社の心臓] (2)印税だけで生活している人はほとんどいない
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出版社は、売れ行きを見て、「これなら増刷しても大丈夫」と判断
したら、増刷します。

増刷時の費用は出版社が負担します。
したがって、第2刷以降は、著者は何もしなくても収入を得られる
ことになります。ここに魅力を感じる人も多いでしょう。

しかし、印税率は8%前後です。

1冊売れて 1,500円×8%=120円 の印税収入。

188万円の赤字が解消されるためには、188万円÷120円=15,000冊 
売れなければなりません。

毎月200冊以上の新刊書が出版されるそうですが、その中で15,000冊
以上売れる本はほんの一握りです。
したがって、文芸以外の世界で、印税だけで生活している人は
ほとんどいないです。



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  [会社の心臓] (3)それでも出版したがる理由
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上記のとおり、出版というものは、けっして儲かる商売ではありません。
しかし、それでも、出版したがる人がいる理由は何でしょうか。


(A)セミナー業とのタイアップ

一つはセミナー業とのタイアップということが考えられます。

「セミナーの講師をしている人は著作物が多い」ということに
気づいている人も多いと思います。

彼らは自分の本をセミナー資料とすることも、講演会場で売ることも
できます。
出版物があると講師として信用されるなどの営業的なメリットも
あるのでしょう。



(B)自己満足

しかし、本を出版したがる最大の理由は、自己満足でしょう。

第2刷以降は、出版社が売れ残るリスクを取るので、出版社は売れ
行きと内容を厳しくチェックします。

しかし、初版時には出版社は何のリスクを抱えないので、なるべく
出版させる方向に話を進めます。
原稿を持ち込んだ作者には、褒めて、おだてて、出版を勧めます。

売れなくても出版社は損をしないので、良く言えば、作者の希望を
尊重してくれます。
悪く言えば、出版社の目的は、作者を満足させることであり、良い本や
売れる本を作ることではないのです。

したがって、悪質な出版社も存在します。

インターネット上でも、「○○舎に200万円払って出版したが、本屋
に自著が置かれているのを見たことがない」とか、「そもそも印刷さえ
していないのではないか」という悪評を数多く見かけます。



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  [会社の心臓] (4)「会計は会社の心臓」出版の理由
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私は「会計は会社の心臓」を年内に出版し、その後も、他の本を
出版していきたいと思っています。

その理由は次の三つです。

・ある程度は売れると思っているから。

・会社としての宣伝効果。

・創造的で文化的な価値を生み出し、社会に貢献したいから。



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  [会社の心臓] (5)パッケージソフトは請負開発と組み合わせる
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出版は次の2点でソフトウェアのパッケージ開発と似ています。


(A)ほとんどの製品は開発費を回収できない

パッケージソフトも出版も、ほとんどの製品は、それ自体では開発費を
回収できません。

パッケージソフトの場合、この問題を解決するために、パッケージと
請負開発を組み合わせるということをやります。

「パッケージと請負開発を組み合わせる」とは次の二つを意味します。

・個別開発システムを汎用品として商品化する。
 →これによって、開発費を減らします。

・パッケージを売り込んで、そのカスタマイズや追加開発で儲ける。

  第183号:AsIs(現状)とToBe(あるべき)(1)インドのERPコンサル会社
  http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2007/06/asistobe_e60d.html




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  [会社の心臓] (6)パッケージは営業やサポートの負担が大きい
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(B)一回作れば、後は、労力をかけずに継続的な収入が期待できる

一回作れば、後は、労力をかけずに継続的な収入が期待できるという
ところも似ているように思えます。
しかし、この部分は少し違います。

出版の場合は、営業やアフターフォローは出版社がしてくれます。
その代わり、印税率は低く抑えられています。

パッケージソフトの粗利率は、本における印税率よりもはるかに
高くなるでしょう。
しかし、ソフトウェア会社は、その粗利を使って、営業もサポートも
しなければなりません。
この負担が大きいのです。関連記事を下記に示します。

 第104号:パッケージソフトで長期的に成功することが難しい理由
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/12/post_9173.html

 第109号:ソフトウェアのコモディティ化が進むということ
     (3)パッケージ・ソフトが置かれている状況
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/01/post_3d3c.html




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  次回以降の予告
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今回、出版について書いてみて、出版とソフトウェア開発との比較は、
面白い切り口だと感じました。

他にも次のような記事が考えられます。

・雑誌の編集長とソフトウェア開発のPMとの比較

・原稿料をもらってライターが記事を書くことと、ソフトウェア会社が
 請負料金をもらってプログラムを作ることの比較

・出版の自己満足とパッケージソフトウェア開発の自己満足との比較


機会があれば、書きます。



次号は、7月16日発行予定です。

乞うご期待!!



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