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第190号  2007/08/06
  ▼  まえがき
  ▼  [労働法の森] (1)労働法が苦手な人たち
  ▼  [労働法の森] (2)3つの基本的な労働時間制度
  ▼  [労働法の森] (3)固定時間制
  ▼  [労働法の森] (4)フレックスタイム制
  ▼  [労働法の森] (5)裁量労働制
  ▼  [労働法の森] (6)それぞれの性格を正しく理解することが重要
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達です。

今週から、労働法についてのシリーズを立ち上げます。

シリーズ名は「労働法の森」とします。



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  [労働法の森] (1)労働法が苦手な人たち
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ソフトウェア会社の経営者、管理職のほとんどは技術畑または営業畑
出身です。

彼らは、技術や営業は得意です。

損益計算書レベルの会計も苦手ではないでしょう。
むしろ、プロジェクト単位などの収支管理は得意でしょう。

一方、彼らが最も苦手なのが、労働法です。

彼らは、長時間労働を厭わず、休日も自宅で仕事や勉強をしている
人たちです。
通勤電車の中でも、夜寝床についてからも、仕事のことを考えている
人たちです。
一般社員のときには、有給休暇を一杯溜めていた人たちです。

したがって、残業、遅刻、早退、欠勤、有給休暇など、細かいこと
(←彼らにとっては)については、あまり真剣に考えないのです。

ソフトウェア会社の経営者、管理職にとって、労働法の世界は、
細かい制約の多い暗い森のようなものです。



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  [労働法の森] (2)3つの基本的な労働時間制度
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労働法の森シリーズでは、労働法の主要な論点を、くっきりはっきり
解説します。


今週号では、3つの基本的な労働時間制度について解説します。

ソフトウェア会社の技術職の労働時間制度は下記の3つの制度の
どれかが採用されています。
(今週号では、営業職のみなし労働時間制については割愛します。)

・固定時間制
・フレックスタイム制
・裁量労働制

時間外労働、遅刻、早退についての扱いは、この中のどれが採用
されているかによって大きく異なります。



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  [労働法の森] (3)固定時間制
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【固定時間制】

就業規則で「定時9:00〜18:00、一日の所定労働時間8時間」と決めた
場合を例にして説明します。

固定時間制では、遅刻、早退について一日単位に控除します。
その代わり、時間外労働の計算も一日単位に行います。

例えば、9:15に出社して18:15まで働いた場合はどうなるのでしょうか?

18:00から18:15までの15分は時間外労働とは見なされません。
9:00から18:00まで8時間働いた場合と同じ扱いとなります。

一日の所定労働時間を超えて働いた場合は時間外労働手当が付き
ますが、残業の申請・承認は必須です。



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  [労働法の森] (4)フレックスタイム制
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【フレックスタイム制】

A.遅刻・早退

フレックスタイム制の場合、遅刻、早退は、コアタイムに対する
ものになります。

例えば、コアタイムを10:00から15:00まで(12:00から13:00までは
休憩時間)とした場合、コアタイム時間は1日4時間です。
遅刻・早退したために1日の労働時間が4時間未満となった場合は
何らかのペナルティーが課される可能性があります。
他の日に多く働いて、その月の労働時間が月間所定労働時間ピッタリ
だったとしても、・・・。

但し、そのペナルティーの内容は各社の就業規則や「フレックスタイム
制に関する労使協定」によります。


B.時間外労働

その月の労働時間が、月間所定労働時間を下回った場合には減額され、
超過した場合は、時間外労働手当が支払われます。

フレックスタイム制を導入した場合、日々の残業申請は意味が
なくなります。
時間外労働の管理の単位が、日ではなく、月になるからです。


C.深夜労働、休日労働

時間外労働は月単位に管理されますが、深夜労働、休日労働は
日単位に管理されます。
深夜労働、休日労働については、固定時間制と同じです。



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  [労働法の森] (5)裁量労働制
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【裁量労働制】

A.遅刻・早退

裁量労働制とは労働時間を自分で管理する制度です。
したがって、遅刻・早退という概念そのものがなくなります。

出社時間、退社時間は、業務を遂行する上での効率性や合理性で
決められます。
したがって、遅刻・早退を理由に控除されることはありません。
但し、非常識な勤怠によって業務に支障が生じた場合は、賞与や
昇給でマイナスとなる可能性があります。


B.深夜労働、休日労働

裁量労働制であろうと、深夜労働、休日労働の扱いは、固定時間制や
フレックスタイム制と全く同じです。

この点は多くの経営者が誤解しています。


C.時間外労働手当

先に「遅刻・早退を理由に控除されることはない」と述べました。
「遅刻・早退がないのだから、時間外労働もないのだろう」と
考えがちですが、それは間違いです。

裁量労働制は、みなし労働制の一種です。
(そして、そのみなし労働時間については労使協定が必要です。)

みなし労働時間を超えるであろう仕事を割り当てる場合は、時間外
労働が発生します。

この点も多くの経営者が誤解しています。



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  [労働法の森] (6)それぞれの性格を正しく理解することが重要
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固定時間制、フレックスタイム制、裁量労働制のどれが良いということ
はありません。

現在、この3つの時間制度が並存しているということは、それぞれの
利点があるからです。

それぞれの性格を理解した上で正しく運用することが必要なのです。



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  次回以降の予告
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次号は、8月13日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
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