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第206号  2008/6/23 [請負と派遣の間]

個人事業主が置かれている状況

 


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第206号 2008/6/23 『個人事業主が置かれている状況』
▼ まえがき
▼ [請負と派遣の間] (1)技術の標準化/PCの低価格化と個人事業主
▼ [請負と派遣の間] (2)個人情報保護や機密情報保護の強化
▼ [請負と派遣の間] (3)個人事業主への再委託
▼ [請負と派遣の間] (4)個人事業主への再委託禁止の理由
▼ [請負と派遣の間] (5)個人事業主支援
▼ [請負と派遣の間] (6)補足

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まえがき
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蒲生嘉達(がもうよしさと)です。

最近、個人事業主(特に40代、50代)から「仕事が無くなってきた」という
話をよく聞きます。

本日は個人事業主が現在置かれている状況についてお話しします。


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[請負と派遣の間] (1)技術の標準化/PCの低価格化と個人事業主
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私は第83号で「技術の標準化とPCの劇的な高性能化・低価格化によって、
個人事業主が存在しやすくなった」ということを書きました。

 第83号:個人事業主
 [B] http://www.gamou.jp/sailing/2005/07/post_d020.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/83-050711.html

尚、第204号で述べた「90年代に大手ソフトウェア会社の外注比率が
激増した現象」の最大の要因も「技術の標準化とPCの劇的な高性能化・
低価格化」にあります。

 第204号:ソフトウェア業はもともとは多重階層型でなかった
 [B] http://www.gamou.jp/sailing/2008/05/post_2eb8.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/204-080510.html

詳しくは、「新航海術の補足ブログ」の下記記事を参照してください。

 「なぜ90年代に大手ソフトウェア会社の外注比率が激増したのか」
 http://www.gamou.jp/comment/2008/06/206_8aac.html


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[請負と派遣の間] (2)個人情報保護や機密情報保護の強化
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しかし、第83号は今から3年前(2005年7月11日発行)に書かれた記事です。
現時点で個人事業主が置かれている状況は少し違います。

個人事業主が生きづらい状況になってきたのです。

その理由の一つは、個人情報保護や機密情報保護の強化にあります。

下記はある個人事業主からいただいたメールの中の一文です。

> 情報保護法が極端に理解されているようで、持ち帰りも少なく
> なっている状況も身にしみています。

個人情報保護や機密情報保護の強化は、中小ソフトウェア会社にとっても
持ち帰り開発を受託しにくい状況を作り出しています。

しかし、会社の場合にはPマークやISMSを取るなどして、情報管理が
しっかりしていることをアピールし、状況を若干改善することができます。

ところが個人事業主にはそれができません。


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[請負と派遣の間] (3)個人事業主への再委託
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個人事業主は常駐案件についても制約を受けています。

例えば、「図1:社員の常駐作業」
( http://www.kei-it.com/sailing/2008/shain-jouchu.htm )に示す
ように元請会社Bシステムが作るチームに、業務委託契約(準委任)で
下請会社Cソフトの社員(鈴木さん)が入るのは良いとされます。

図1を見て「Bシステムの社員(山田さん)がCソフトの社員
(鈴木さん)に指図しているから偽装請負ではないか」と考える人も
いるでしょうから、その点について簡単に触れておきましょう。

鈴木さんが専門技術を認められ、仕事を任されているなら、図中の
山田さんから鈴木さんへの矢印は「指図」ではなく、「注文」と
見なされます。

> 請負の場合であっても、当然、注文主としては請負業務の内容について
> 注文を付けるのが一般的である。となると、注文主の出す「注文」と、
> ここでいっている「指示」「指図」とはどう異なるのであろうか。
>
> 作業内容、方法について逐一指示があり、自由裁量の余地がないような
> 場合は、ここでいう「指示」「指図」にあたるわけで指揮命令の存在を
> 評価されるわけだ。
> (山崎 陽久著「ソフトウェア開発・利用契約と契約文例事例集」より)

もしも、鈴木さんが、作業内容、方法について逐一指示を受けている
なら、労働者派遣契約にすべきでしょう。
「図2:労働者派遣契約」( http://kei-it.com/sailing/2008/haken.htm )
参照。

 関連記事:第54号「準委任と人材派遣を分かつもの」
 [B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/12/post_75f8.html
 [H] http://www.kei-it.com/sailing/54-041220.html

労働派遣契約になったとしても、鈴木さんは何も困りません。


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[請負と派遣の間] (4)個人事業主への再委託禁止の理由
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しかし、「図3:個人事業主の常駐作業」
( http://www.kei-it.com/sailing/2008/ic-jouchu.htm )のような
形態は認めないという元請会社が増えてきています。

「図1:社員の常駐作業」でのCソフトから鈴木さんへの矢印は
雇用契約であり、そこには明らかに強制力を伴う「指図」が存在します。

しかし、「図3:個人事業主の常駐作業」でのCソフトと佐藤さん
との関係は対等な業務委託契約(準委任)であり、そこには雇用関係
をベースとした「指図」が存在しません。

「図3:個人事業主の常駐作業」のような形態を認めない元請会社が
増えている理由は、行政からの指導だけでなく、このような形態で
過去に多くのトラブル(情報漏洩など)が発生したからでしょう。


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[請負と派遣の間] (5)個人事業主支援
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上記二つの理由によって、現在、ソフトウェア業界は個人事業主が
生きづらい世界になってきています。

それが日本のソフトウェア業界に与える影響について、私はまだ
よく考えていません。

しかし、慶としては微力ながら、個人事業主を支援していきたいと思っています。


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[請負と派遣の間] (6)補足
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第203号、第204号、第205号で、私は「日本のソフトウェア産業が
いつまでもダメな理由」(久手堅憲之著)を批判的に引用しています。

個人事業主に関する記述でも、この本については不満があります。

詳しくは、下記ページを参照してください。

 新航海術の補足ブログ:
 「日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由」への不満
 ( http://www.gamou.jp/comment/2008/06/post_9145.html )


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