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第137号 2006/7/24
▼ まえがき
▼ [ゴーイング・コンサーン] メーカの経営理念の三点セット
▼ [ゴーイング・コンサーン] ゲーム会社には経営理念がない(?)
▼ [ゴーイング・コンサーン] ゲームは作品が全てだから(?)
▼ [ゴーイング・コンサーン] メーカの黄金律、ゲーム業界の不条理
▼ [ゴーイング・コンサーン] 慶の経営理念
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今回は経営理念について基本的な話をします。

「ゴーイング・コンサーン」シリーズに分類します。

「ゴーイング・コンサーン」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー ゴーイング・コンサーン」
http://www.kei-it.com/sailing/back_going.html を参照してください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「ゴーイング・コンサーン」をクリックして
ください。



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[ゴーイング・コンサーン] メーカの経営理念の三点セット
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第134号で、メリーチョコレートと任天堂という対照的な会社を例に
出しました。

( 第134号「各社のゴーイング・コンサーン」
http://www.kei-it.com/sailing/134-060703.html または
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/post_83c8.html )


メリーチョコレートのホームページ( http://www.mary.co.jp/ )には
次のような経営理念が掲げられています。

1.品質第一に徹する。
2.顧客奉仕に最善を尽くす。
3.社員の福利増進に努める。


これは製造業の会社の経営理念の典型です。

家電業界でも自動車業界でもコンピュータ業界でも、ほとんどの
メーカの経営理念は、「品質第一・顧客奉仕・社員福利」の三点セット
のバリエーションです。

会社によって言葉は違いますし、今はやりの言葉がちりばめられている
場合もあります。
しかし、よく読むとこの三要素が盛り込まれているのです。



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[ゴーイング・コンサーン] ゲーム会社には経営理念がない(?)
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こんどは任天堂のホームページ( http://www.nintendo.co.jp/ )を
見てみましょう。

売上高4,117億円(2006年3月期、単独)の大企業にしては、簡素な
ホームページです。

企業理念や経営理念などは一切載っていません。
代表者の挨拶すらありません。
「社長メッセージ」 http://www.nintendo.co.jp/n06/message.html
というページはありますが、これは採用情報の中の1ページに過ぎません。

他にも次に示すようなゲーム業界大手のホームページを幾つか見て
みました。

・セガ  http://sega.jp/
・スクウェア・エニックス http://www.square-enix.com/jp/index_f2.html
・アトラス http://www.atlus.co.jp/

どの会社のホームページにも、企業理念や経営理念のページはあり
ませんでした。



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[ゴーイング・コンサーン] ゲームは作品が全てだから(?)
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メーカはどんなに小さな会社でも経営理念を掲げたがります。
その中身が似通っているにもかかわらず・・・。

一方、ゲーム会社は任天堂のように巨大企業になっても経営理念を
掲げません。

この違いの原因は何でしょうか?

次の原因が考えられます。

・ゲームはサブカルチャーなので、肩肘張って理念を語る世界ではない。
・ゲーム業界には「目標」や「志」が嫌いな人が多い(?)
・ゲームは作品が全てであって、その作家の理想や生き様などどう
 でもいい。ましてや、販売元の会社の経営理念なんてどうでもいい。



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[ゴーイング・コンサーン] メーカの黄金律、ゲーム業界の不条理
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しかし、最大の原因は、業界としての性格の違いでしょう。

> 家電の世界では、最高の技術を安価に提供する事がベスト。
> そこに黄金律が存在する。また、もし10万円で売れなくても5万円に
> 値引きすればまず売れる。
> http://www.geocities.co.jp/Playtown/4007/phy40c2.html


「品質第一・顧客奉仕」はメーカでの製造現場の日常的な目標です。
製造現場ではこれ以外の目標はないと言っても過言ではありません。
しかも、全員が一丸となれる目標です。
そして、それを支えるために終身雇用的な「社員福利」があります。
したがって、メーカが「品質第一・顧客奉仕・社員福利」を経営理念
とすることは、自然なことなのです。
たとえ経営者からトップダウンされたかのように語られていたとしても、
実際にはメーカの日常業務から自然発生したことでもあるのです。


一方、ゲーム業界とは下記のように不条理な世界です。

> ブーム時には1万円でも売れた娯楽品「たまごっち」は、ブームが
> 去ると、100円でも売れない。遊びが飽きられ、付加価値(流行)
> を失い、欲しいと思わせない。
> http://www.geocities.co.jp/Playtown/4007/phy40c2.html


ゲーム会社の最も大事な目標は「何か面白いことを考え出す」でしょう。
しかし、これは全員が一丸となってできることではありません。
「何か面白いこと」は、むしろ少数の変人から出てきます。
したがって、全員が納得できる経営理念が自然発生的に生まれてきません。

また、この「何か面白いこと」を固定的な言葉で表現してしまうと、
それにとらわれてしまうという弊害があるので、成功しているゲーム
会社ほど経営理念を言葉にしないのではないでしょうか?

> 第一、"一寸先は闇"のこの業界(娯楽)で、こうしなきゃならんなど
> という固定的な考え方は、なんらプラスにならない。それどころか、
> 自ら負けを招くようなものです。

(「山内社長の信念」
http://www.geocities.co.jp/Playtown/4007/phy40c2.html より)



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[ゴーイング・コンサーン] 慶の経営理念
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さて、中小ソフトウェア会社の経営理念、そして、慶の経営理念は
どうあるべきでしょうか?

メーカ下請け型のソフトウェア請負開発会社で行くなら、企業理念は
「品質第一・顧客奉仕・社員福利」のバリエーションでよいでしょう。

しかし、パッケージ型、サービス型で行くなら、少しゲーム会社の
ような不条理な世界に近づきます。

4月に作成した慶の会社案内の表紙では、私は、次のような表現を
使いました。
岩井克人著「会社はこれからどうなるのか」の影響を受けています。


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          <経営理念>
市場を驚かす差異性をもった製品及びサービスを効率的かつ
迅速的に提供し続けること。
そのために、個々の事業部は自らのコア・コンピタンス
(中核的競争能力)を特定化し、そこに人的資産を集中的に
投入すること

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。


技術系:
・グーグルの衝撃
  本を読むこと、ネットで読むこと
  ITバブルは詐欺だった
  ポスト産業資本主義化はIT革命によって引き起こされたのではない。

・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

財務系
・資産と費用

経営系:
・壊れ窓の理論

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、7月17日発行予定です。

乞うご期待!!



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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年7月23日現在、519名です。


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