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第249号  2013/10/20 [農家.com]

負の相関関係

 

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第249号 2013/10/20 『負の相関関係』
▼ まえがき
▼ (1)穂数、籾数、登熟歩合
▼ (2)これらに関与する形質はしばしば相互に負の相関関係にある
▼ (3)松島省三氏の「V字理論」
▼ (4)新たな負の相関関係:多収穫と良食味
▼ (5)新たな負の相関関係:多収穫と環境保全
▼ (6)負の相関関係を乗り越える
▼ あとがき


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まえがき
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こんにちは。蒲生嘉達(がもうよしさと)です。

今回は稲作についての雑談です。


東大TVで公開されている次の講座を参考にしています。

「生態系のバランスと種の変遷 作物栽培におけるバランスーイネとコメー」
 ( http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/t8t7gp/phroex ) 



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 (1)穂数、籾数、登熟歩合
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> 多収穫を得るためには、穂数、籾数、登熟歩合を向上させればよい。
> (松島省三1966「稲作診断と増収技術」(農文協)より)


稲作で多収穫を得るためには、一株あたりの穂数、一本の穂あたりの籾数、
登熟歩合(籾の中で実が入っている割合)を向上させればよいことは
我々素人にも理解できます。

そして、初期に窒素肥料を施せば穂数が増え、中期で施せば籾数が増え、
後期で施せば登熟歩合が高まります。



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 (2)これらに関与する形質はしばしば相互に負の相関関係にある
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しかし、先の引用は次の文章に続いています。

> しかし、これらに関与する形質はしばしば相互に負の相関関係にあり、
> すべてを増加させるのは難しい。
> (松島省三1966「稲作診断と増収技術」(農文協)より)


初期にたくさん肥料を与えると穂数は増えますが、一本の穂あたりの
籾数は減ります。

穂あたりの籾数を増やすために中期に大量に施肥すると、今度は
イネの背が高くなりすぎ、葉が長くなりすぎ、受光態勢が悪くなり、
登熟歩合が低下する上に、倒伏しやすくなります。



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 (3)松島省三氏の「V字理論」
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この負の相関関係を断つために松島省三氏は昭和30年代に次のような
「V字理論」を提唱しました。

(a)背が低くて葉も長くならない品種(短稈穂数型品種)を選ぶ。
(b)株を密植させ、施肥によって茎数を増やすことにより、穂数を増やす。
(c)中期(幼穂分化期)には肥料を与えない。
 →一本の穂あたりの籾数は犠牲になるが、その分(b)で穂数を増やしておく。
(d)後期に再び肥料を与え、登熟歩合を上げる
(e)窒素肥料を多く与えると病気になりやすくなるので、農薬でそれを防ぐ。

これが現在でも日本の稲作の主流となっています。



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 (4)新たな負の相関関係:多収穫と良食味
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V字理論は多収穫のための理論であり、多収穫は今でも極めて重要です。

しかし、1960年代後半以降、米が余るようになり、関心が多収穫から
良食味に移ってくると、別の負の相関関係が注目されるようになりました。

米はタンパク含量が低いほど味がよくなります。
そして、窒素含量が低いほどタンパク含量が低くなります。

ところが、窒素肥料の大量投入で多収穫を目指すと、窒素含有
(その結果タンパク含量)が高まり、食味は劣ることになります。

窒素肥料の大量投入による多収穫と良食味とは負の相関関係にあるのです。

そのため、栽培技術面では収量を多少犠牲にしても窒素肥料を減らす手法
(例:への字栽培)が提唱され、品種面では肥料を多く与えてもタンパク
含有率が低くなる品種が研究されるようになりました。



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 (5)新たな負の相関関係:多収穫と環境保全
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1980年代からは環境保全にも関心が高まってきました。
化学肥料の使いすぎによって土壌が疲弊し、農薬によって環境が汚染
されてきたからです。

ここでも、(化成肥料と農薬の大量投入による)多収穫と環境保全が
負の相関関係となっています。



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 (6)負の相関関係を乗り越える
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負の相関関係は、様々なところで我々を悩ませます。

例えば、日本経済の財政再建と景気回復も負の相関関係にあります。

あるいは、「『才あるものは徳がない、徳あるものは才がない』というのは、
人事における不滅の公理」(堺屋太一「組織の盛衰」より)も負の
相関関係の一つでしょう。


しかし、日本の稲作研究者が、栽培技術と品種改良の両サイドから、
様々な負の相関関係を乗り越えようと努力し、実際にかなり乗り
越えてきたという話は、我々を勇気づけてくれるのではないでしょうか。



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